政策学会講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『岐路に立つWTO体制』
テーマ | 『岐路に立つWTO体制』 |
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講師 | 深作 喜一郎氏 |
日時 | 2022年7月7日(木)9:00~10:30 |
会場 | Zoomにて開催 |
去る7月7日、政策学会講演会に講師として、元OECD開発センター地域開発部長で現在国際エコノミストとして活躍されておられる、深作喜一郎氏をお迎えし、「岐路に立つWTO体制」というタイトルでお話しをいただいた。深作氏は、OECDに勤務される以前には、WTOの前身であるGATTにもエコノミストとして勤務されたご経験があり、それも交えながら外部からはなかなかわかりにくい世界貿易体制について、わかりやすくお話しをいただいた。
まずは、現在のWTO体制がどのような経緯で構築されてきたのかその歴史的変遷と、WTOという国際機関が本来果たすことが期待されている役割についてお話しをいただいた。しかしながら、新型コロナ感染症によるパンデミック、そして、2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの侵攻は、戦後、GATT-WTO体制の下で育まれてきたグローバリズムやマルチラテラリズムへの信奉が益々揺らぐことになったことを強調された。複合危機の到来である。救いは、2022年6月、4年半ぶりに開催されたWTO閣僚会議では6年半ぶりに閣僚宣言を採択、漁業補助金協定で合意に達したことであると述べられた。何とか、マルチラテラルな貿易交渉の存在意義が示されることになったのである。
最後に、WTO体制の存続の鍵は、日本を含む先進国の国々で構成されるオタワグループ諸国が中心となってすべての加盟国が納得できるようなWTO改革がどこまで進むか、にかかっていると強調されて講演を終了した。本講演には国際貿易の受講生のみならず他の政策学部の学生さんの参加もあり、現在の国際経済に対する興味関心の高さをうかがう事ができたのと同時に、講演後には多くの参加者からの質問が出て、熱気あふれる中、会を終了した。
(政策学部教授 岡本 由美子)