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政策学会講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『開発途上国における食料・栄養安全保障:気候変動と社会規範』
| テーマ | 『開発途上国における食料・栄養安全保障:気候変動と社会規範』 |
|---|---|
| 講師 | 松浦 正典 氏 |
| 日時 | 2026年6月16日(火)16:40~18:10 |
| 会場 | Z30 |
去る6月16日、政策学会講演会に独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の松浦正典氏をお迎えし、「途上国の食料・栄養安全保障について考える」という演題の下でご講演いただいた。松浦氏は、農業経済学や開発経済学をご専門とされ、これまでにバングラデシュなどにおける農家の気候変動適応やそれが食料安全保障や子どもの健康状態に与える影響などについて実証研究を積み重ねてこられた。今回は、開発途上国の農村部に焦点をあて、人々が食料安全保障を確保する上で直面する障壁やその対応策などについてお話しいただいた。
ご講演では、まず家計の食料安全保障の状況を把握する際には、単に人々がどの程度の食料を入手できているのかというアクセスの観点のみならず、どのような食料を入手できているのかという栄養バランスの観点をも考慮する必要があることを強調された。その上で、バランスの良い食事を十分にとれないことが子どもの発育や健康状態に深刻な影響を及ぼしうることをご指摘された。しかしながら、家計、特に農業で生計を立てている人々が食料安全保障を確保するにあたっては、天候や疫病リスクなどに加え、交通インフラの未発達や衛生環境の問題など、様々な障壁が存在することをご説明された。
ご講演の後半では、これまでのバングラデシュにおけるご自身のご研究をご紹介いただきながら、食料安全保障の実現に向けて家計がとる行動の一つである生計の多様化が実際に食料安全保障の確保や子どもの健康状態の改善につながるのか、またそのような対応が天候ショックへの有効な適応策になりうるのかなどについて見解を述べられた。実証分析では、非農業部門からの所得の増加は、食料安全保障を高める可能性があることが示されたものの、生計の多様化を促す政策だけでは貧しい農家の食料安全保障の確保は難しく、非農業部門における質の高い雇用創出も必要であることをご指摘された。
最後に、データ分析の面白さ・有効性について言及され、分析結果を客観的に解釈する力は社会に出ても役立つことを強調されたほか、国内外の様々な環境に触れることの大切さについても述べられ、ご講演を締めくくられた。ご講演後には参加者から質問などが出され、大変有意義な講演会となった。
(政策学部教授 新見 陽子)
