政策学会講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『ゼロ・ウェイストタウンのこれまでとこれから』
テーマ | 『ゼロ・ウェイストタウンのこれまでとこれから』 |
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講師 | 松本 卓也氏 |
日時 | 2022年1月13日(木)10:45~12:15 |
会場 | Zoomにて開催 |
去る1月13日、政策学会講演会に松本卓也氏をお迎えし、「ゼロ・ウェイストタウンのこれまでとこれから」というタイトルでお話いただいた。上勝町は徳島県の真ん中あたり、総面積のうち約85%は森林で、人口は約1500人、高齢化率約50%という過疎と高齢化が同時進行している四国一小さな町である。日本初のゼロ・ウェイスト宣言自治体であり、ごみをどう処理するかではなく、ごみを出さない社会を目指している。
まず、前半に気候変動の問題とゼロ・ウェイスト政策推進の必要性についてレクチャーをいただいた。上勝町がゼロ・ウェイストタウンを目指すに至った経緯についてのお話は、ごみ処理問題が、特に高齢化の進む財政規模の小さな自治体において、いかに大きな負担となる問題であるか、学生達に実感をさせるものであった。
続いて、財源不足、資源不足の問題に直面する中で、上勝町が取った政策により地域活性化までが図られていくプロセスの詳細が明らかにされた。ごみの発生抑制に向けた取り組みの一つとして近年、自治体とNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーが連携して進める「ゼロ・ウェイスト」の実践について、くるくるショップ、くるくる工房、そして、ゼロ・ウェイストに取組む飲食店を独自の基準で審査を行い、公的に認証することにより、その取組みを奨励することを目的として設立されたゼロ・ウェイスト認証制度、その他にちりつもキャンペーンやノーレジ袋キャンペーンまで多様な取組が上勝町の中で展開されている様子は、学生たちに説得力を持って伝わった。リサイクルからリデュース・リユースへの転換し、ゼロ・ウェイストブランドを生かしたビジネスの創生を育むことで、ゼロ・ウェイストにより町民の暮らしを豊かにできるかの問いは、学生達も真摯なものとして受け止めていたようであった。認証店のひとつである「polestar」では、仕入れ時に容器包装を削減し、使い捨てのナプキン等を出さず、マイバッグやマイボトル運動の奨励し、量り売りを店内で積極的に行うなどしている。その他にもHotel
WHYをはじめとして新たなビジネスの創生は既に具体的に展開をしており、実効性のある政策に大きな学びを得ることができた。
政策学部の卒業生でもある松本氏による持続可能な暮らしを考え、地域づくりに尽力される熱のこもったご講演に、参加者は非常に熱心に聞き入った。
(政策学部准教授 小谷真理)