政策学会講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『グローバル・サプライチェーンの発展と今後の在り方―日本及び途上国の視点から―』
テーマ | 『グローバル・サプライチェーンの発展と今後の在り方―日本及び途上国の視点から―』 |
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講師 | 戸堂 康之氏 |
日時 | 2021年6月22日(火)16:40~18:10 |
会場 | Zoomにて開催 |
去る6月22日,政策学会講演会に早稲田大学政治経済学術院経済学研究科の戸堂康之教授をお迎えし,「グローバル・サプライチェーンの発展と今後の在り方~日本及び途上国の視点から」というタイトルでご講演いただいた。戸堂教授は,国際経済学や開発経済学,日本経済論をご専門とされ,特にグローバル・サプライチェーンなど経済・社会ネットワークが経済の成長や強靭性に与える影響について長年にわたり研究を積み重ねてこられた。今回は,戸堂教授のこれまでのご研究をご紹介いただきながら,グローバル・サプライチェーンの在り方などについてお話しいただいた。
ご講演では,まずグローバル・サプライチェーンが構築されていった背景に加え,途上国がグローバル・サプライチェーンに組み込まれていくことで新たな発展経路を見出すことが可能になったことをご説明された。しかしながら,新型コロナウィルス感染症が世界的に流行する中で,部品の供給の停止や需要の縮小などといったグローバル・サプライチェーン途絶のリスクなど,その弱点が浮き彫りになったことをご指摘された。他方で,部品の代替性が強靭性において有効であることも示され,グローバル・サプライチェーンのリスクを軽減するには,更なるグローバル化を進めていくことで,地域的により多様化していくことが重要であることを強調された。
最後に,今後は,これまでの部品・素材の製造や組立からなるサプライチェーンを超え,より高い付加価値を生む上流(研究開発や商品開発など)・下流(マーケティングやデータ解析など)の事業においても多様な連携が必要であることをご指摘された。ただし,途上国のみならず,日本においても他国との知的な連携は不十分であり,この点を改善するためには社会交流の促進が不可欠であるとご説明された。したがって,ウィズコロナ・ポストコロナ時代においては,いかにして対面・オンラインコミュニケーションを組み合わせて効率よく多様なつながりを構築していくかが課題になることを強調され,ご講演を締めくくられた。講演会には開発政策を履修していない学生も数多く参加し,参加者からは時間内に対応しきれない数の質問が出るほどで,大変有意義な講演会となった。
(政策学部教授 新見 陽子)