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政策学会講演会特集

政策学会講演会(レポート)
『インドが抱える問題・課題と今後の持続可能な発展の可能性』

テーマ 『インドが抱える問題・課題と今後の持続可能な発展の可能性』
講師 野口 直良氏
日時 2022年11月18日(金)9:00~10:30
会場 新町キャンパス 尋真館Z21

 去る11月18日、政策学会講演会に講師として、元JETRO理事であり、現在、一般財団法人国際貿易投資研究所(ITI)専務理事の野口直良氏をお迎えし、「インドが抱える問題・課題と今後の持続可能な発展の可能性」というタイトルでお話しをいただいた。野口氏は、JETRO在職中に、2度、計10年間にわたり同機構事務所長としてインドに滞在されたご経験があり、それも交えながら外部からはなかなかわかりにくいインドの政治・経済・社会について、わかりやすくお話しをいただいた。
 まずは、インドの歴史を踏まえながら、インドは経済面で見ても、政治面で見ても、社会面でみても、すべてにおいて、光と影、つまりは、2面性を有しており、将来に希望が持てる反面、様々な問題・課題を抱えていることを強調された。内政的には、国の統一性を強調しつつも、ヒンドウ民族主義政策によって政治が不安定化する要素を内包している。今回のロシア・ウクライナ戦争に際しても、戦略的自立性を堅持するため、曖昧な態度をとり続けており、対外的には諸外国、とりわけ、西側先進国からは不興を買っている。経済的にも、IT産業を始めとした対外的に競争力がある産業が登場してきた一方、雇用を多く生み出し、中間層を支える製造業のそれは芳しくない。これが、多くの東アジア諸国が参加するにも関わらず、2022年1月に発効した地域的な包括的経済連携協定(RCEP)にインドが参加しない決断を下した理由である。さらに、社会的にも、様々な問題を抱えている。インド工科大学のような世界的に有名な大学が世界から脚光を浴びる一方、カースト制度の影響がまだ色濃く残っており、所得格差や地域間格差も依然、大きい。環境問題も深刻であり、2070年までにカーボンニュートラルをどのように達成できるのか、大きな課題となっている。
 このように、影の部分が非常に多い一方、インドは人口規模も大きく、かつ、多様性に富んでいて、これまでの東アジア諸国とは異なる持続可能な発展を遂げていく可能性も秘めている。したがって、最後に、野口氏は、今後の日本にとってインドは極めて重要な戦略的パートナーとなりうることを強調されて、講演を終了した。本講演にはグローバル経済論の受講生のみならず他の政策学部の学生さんや学部教員の参加もあり、現在の国際経済に対する興味関心の高さをうかがう事ができた。

(政策学部教授 岡本 由美子)

野口 直良氏