政策学会講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『次世代AIでよみがえる日本経済』
| テーマ | 『次世代AIでよみがえる日本経済』 |
|---|---|
| 講師 | 石橋 英宣 氏 |
| 日時 | 2025年10月27日(月)16:40~18:10 |
| 会場 | Z20 |
去る2025年10月27日、政策学会講演会に講師として公益社団法人日本経済センター主任研究員の石橋英宣氏をお迎えし、『日本経済研究センター2075年長期経済予測 最終報告書』に基づき「2075年 次世代AIでよみがえる日本経済」というタイトルでお話しいただいた。日本経済研究センターの長期経済予測は、昭和21年3月に作成された外務省特別調査委員会報告『日本經濟再建の基本問題』にその源流を遡ることができ、1967年3月に公表された『日本経済の長期展望-1975年と1985年の場合―』以降、おおよそ5年ごとに公表されてきた。 政府からも職員が派遣され作成に加わるため、信頼性の極めて高い報告書として知られている。
今回の長期予測は前回の2019年12月以来のもので、今後50年に渡るマクロ経済の見通しを予測したものである。現行の政策・経済環境の延長線上での世界経済の将来像(標準シナリオ)を想定することに加え、生成AIの普及が経済成長に与える影響を考慮し、出生率・移民・経済成長率を絡めながら予測したものである。特に人間と同等の能力を持つ次世代AIである汎用AI (Artificial General Intelligence:AGI) の普及に焦点を当てた将来像(改革シナリオ)との比較が予測の大きな特徴と言える。
標準シナリオに基づく、日本の将来像は明るくない。2075年の日本の実質GDPは、世界ランキングで11位であり、イギリス、フランス、カナダといった国々に抜かれ、現在の4位から大きく順位を落とす。2025年時点のGDPを比較するとアメリカが日本の6.7倍、中国が日本の4.4倍であるが、2075年にはそれぞれ12倍、7.8倍と更に水を開けられることになる。現在、日本と同程度のGDPであるインドは、2075年には日本の3倍となる。
一方で、次世代のAIである汎用人工知能AGIを上手く社会実装することができれば、標準シナリオを大幅に改善することができる。GDPランキングでは現状維持の4位に留まることができ、アメリカ、中国との規模の比較でも現状を維持することが可能とのことである。ただし、様々な課題も挙げられる。社会実装に伴い、技術の変化、産業構造の変化がもたらされるが、それに合わせて社会も変化を迫られる。これらをどう克服するかがAGIシナリオの大きな論点である。学生さんにもこの点について考察を深めて欲しいという課題が出題され、講演は締めくくられた。
講演後の質疑応答では、AGIの実装が国によって生産性向上に及ぼす影響が異なるのは何故かや、AGIは大量の電力消費が必要とされるが、AGIの実装と気候変動対策は両立できるのか等の疑問が学生の方から出され、活発な意見交換がなされた。このような形で盛況のうちに講演会は終了した。
(政策学部教授 川上 敏和)
