政策学会講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『行政の不作為の違法~原発避難者訴訟』
テーマ | 『行政の不作為の違法~原発避難者訴訟』 |
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講師 | 宮地 重充 氏 |
日時 | 2025年7月17日(木)13:10~14:40 |
会場 | Z20 |
去る7月17日、弁護士の宮地重充氏をお迎えし、「行政の不作為の違法~原発避難者訴訟」と題して講演が行われました。宮地氏は、福島第一原発事故により兵庫県に避難した30世帯78人の訴訟に、弁護団の一員として関わっています。
講演は、原子力発電の原理の確認から始まり、地震による外部電源の喪失、津波による非常用電源の浸水、全電源喪失(SBO)、そしてメルトダウンに至る過程が、政府と現場の連携の課題と共に詳細に説明され、事故対応の複雑さと課題が強調されました。
訴訟の争点である「予見可能性」と「結果回避可能性」については、学生に意見を問いながら判決との比較を行い、多角的に考察。特に、最高裁が、津波の予見可能性を認めつつ、国の責任を否定したことに対し、三浦判事の反対意見(水密化対策による事故回避の可能性)を紹介し、国の責任を問う視点が提示されました。
動画資料を交えた丁寧な講義は学生が理解を深める上で有用であり、リアルタイムにアンケートを取り学生たちの意見を踏まえながら争点を論じることで、「予測可能性」の議論は非常に活発なものとなりました。「回避可能性」についても、技術的・費用的な困難さが語られ、課題の重さが伝わる内容でした。
最後に、避難者が直面した家庭不和、健康不安、ふるさとの喪失などの実態にも触れ、原発事故がもたらした深刻な社会的影響について考察。原子力発電所の再稼働や新設が話題となる現在、地震国・日本において、責任ある機関が適切な判断をし、対策を怠らないことの重要性を感じたとの感想が多く寄せられました。学生から熱のこもった意見が活発に出され、充実した講演となりました。
(政策学部准教授 小谷 真理)
