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政策学会講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『WTOの今後のゆくえ』
テーマ | 『WTOの今後のゆくえ』 |
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講師 | 深作 喜一郎 氏 |
日時 | 2025年7月3日(木)9:00~10:30 |
会場 | Z30 |
去る7月3日、政策学会講演会に講師として、長い間GATTやOECDといった国際機関に、ご勤務されたご経験がある深作喜一郎氏をお迎えし、「WTOの今後のゆくえ」というタイトルでお話いただいた。深作氏は、国際機関のみならず、日本の慶應義塾大学で教鞭をとられるなど多岐に及ぶご経歴から、WTOの意義と今後のゆくえについて詳細なレジュメを用意され、実例を交えながら明快に語られた。
WTOの役割について丁寧に説明された後、WTOを含めた戦後の国際経済体制の最大の危機について述べられた。すなわち、2025年1月に新しいアメリカ合衆国の大統領にトランプ氏が就任してから導入された相互関税である。すでに、第一次トランプ政権の時代からその傾向は存在したが、事前協議もなく、2国間レベルで一方的に譲歩を迫るやり方は、まだ脱退には至ってはいないものの、アメリカ合衆国がWTO離れを起こしていることを如実に表している、とのことである。ただし、深作氏はトランプ政権のやり方を非難するというよりは、何故、アメリカ合衆国がそのような貿易政策を導入するように至ったのか、その背景を丁寧に説明され、御講義がより説得的なものとなった。
最後にWTOの今後の方向性を3つ述べられて、講演は終了した。講演の開始から終わりまで、参加者が非常に熱心に聞き入り、絶え間なくノートを取っている光景が印象的であった。また、終わりに参加者から多くの質問も出て、非常に活気のあるご講演となった。
(政策学部教授 岡本 由美子)
