政策学会講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『SDGs時代における社会起業家の役割-ウガンダの事例より』
テーマ | 『SDGs時代における社会起業家の役割-ウガンダの事例より』 |
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講師 | 仲本 千津 氏 |
日時 | 2024年12月19日(木)9:00~10:30 |
会場 | Z21 |
去る12月22日、政策学会講演会に講師として、株式会社Ricci Everyday代表取締役の仲本千津氏をお迎えし、「SDGs時代における社会起業家の役割-ウガンダの事例より」というタイトルでお話いただいた。仲本氏は、社会起業家として現在の企業を立ち上げる前に、一橋大学大学院で国際政治を修めた後、大手銀行での勤務を経て、財団法人でプログラムオフィサーを務めるなど、非常に多岐に及ぶご経歴から、SDGs達成のための社会起業家の役割と意義について詳細な講義資料を用意され、ウガンダでの実例を交えながら明快にお話になった。
ウガンダを含むサブ・サハラアフリカでは女性の貧困率は高い。その要因として、女性はシングルマザーになる可能性が高いことを挙げている。アフリカでは家父長制度や一夫多妻制といったような文化的な背景の下、女性がシングルマザーとなって働き、子供を養育せざるを得ないケースが散見されることを問題視し、ソーシャルビジネスという手段を通じて、それらシングルマザーの救済に乗り出した。ビジネスという手段では救済できない事が多々あることは承知しつつも、ビジネスは両者(日本の起業家とウガンダのシングルマザー)が対等な立場でWin-Winの協力関係を築くことができるため、仲本氏はビジネスという手段を通じてその問題の改善・軽減に取り組み始めたとのことである。また、社会起業家が単独で事業を行うのみではインパクトに限りがあるため、日本の他のNGOや、国連機関(例えば、UN Women)と組んでコレクティブでインパクトを創出されようとしているのが、非常に印象的であった。
仲本氏のすごさは単に、ビジネスを通して途上国の社会課題の解決を目指すだけではない。アフリカンファブリックを製造する企業まで自ら出向き、環境に負荷がかかっていない方法で生産されているかどうか、材料である布の製造工程の細部まで気を配っておられる。かつ、製品が消費者に届くまでの工程も非常に簡素化し、生産者と消費者との距離を短くする工夫もされている。つまり、仲本氏はサプライチェーンの最初から最後まで責任を負う、というような企業行動をとられているのである。企業家としての責任ある社会行動の模範といっても過言ではない。
最後に今後の抱負を熱く語られて、講演を終わられた。参加者が非常に熱心に聞き入り、多くの質問が出され、活気ある講演のうちに終了した。
(政策学部教授 岡本由美子)
