政策学会講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『WTOの歴史的変遷と今後のゆくえ』
テーマ | 『WTOの歴史的変遷と今後のゆくえ』 |
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講師 | 箭内 彰子 氏 |
日時 | 2024年6月27日(木)9:00~10:30 |
会場 | Z20 |
去る6月27日、政策学会講演会に講師として日本貿易振興機構アジア経済研究所新領域研究センター 法・制度研究グループ長である箭内彰子氏をお迎えし、「WTOの歴史的変遷と今後のゆくえ」というタイトルでお話しをいただいた。箭内氏は、アメリカ合衆国・ジョージワシントン大学ロースクール、世界銀行Legal Counsel、ジョージタウン大学国際経済法研究所など多岐に及ぶご経歴から、WTOの歴史的な変遷、現状、そして、今後の課題について詳細かつ大変わかりやすい講義資料を用意され、実例を交えながらお話をいただいた。
戦前の各国の保護主義が第2次世界大戦の遠因となったこと等、戦後の自由貿易体制確立の由来からお話をされ、WTOの前身であるGATTについても触れられた。1980年代から世界経済のあり方が大きく変わりつつあり、1995年、国際機関として様々な機能が追加・強化されたWTO体制がスタートし、当初期待も大きかった。しかし、20年以上も妥結していないラウンド交渉のみならず、貿易政策レビューはある一部の国々に限られていること、そして、WTOの一つの大きな強みであり特徴である紛争処理機能も機能不全に陥っている事が示すように、現在、WTOは大きな曲がり角に立っていることを丁寧に説明された。
しかし、経済が益々グローバル化する中で、世界全体をカバーする通商体制は以前、大変重要であるが、これまでと同じことを繰り替えしていたのではWTOの将来はない。その意味で、持続可能な社会づくりに必要な項目をWTO協定に含めるなり、他の国際機関と連携するなり、今後、WTOにも変革が求められることを強調された。また、今後は通商ガバナンスを支えるものとしてWTOのみならず、地域貿易協定や民間団体・企業が主導するプライベート・スタンダードの重要性が増す事も述べられ、講演は終了した。講演の開始から終わりまで、参加者が非常に熱心に聞き入り、絶え間なくノートを取っている光景が印象的であった。また、講演終了後にも積極的に講師に質問する参加者が複数いて、活気ある講演会のうちに終了した。
(政策学部教授 岡本 由美子)