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政策学会講演会特集

政策学会講演会(レポート)
『こどもにやさしいまちづくりの実務』

テーマ 『こどもにやさしいまちづくりの実務』
講師 水島 信 氏 
日時 2024年5月23日(木)13:10~14:40
会場 Z20

 去る5月23日、政策学会講演会に水島信氏をお迎えし、「こどもにやさしいまちづくりの実務」というタイトルでお話いただいた。
 まず、約50年前の1972年ミュンヘンオリンピック競技場施設とその11年後に実行された国際庭園博覧会会場の現在の写真が示され、事業の結果が常に市民生活に快適性をもたらす手法をとるという政策方針がドイツの都市計画又はまちづくりにおける基本哲学になっていることが示された。もともと高速道路に隣接し、騒音や排気ガスの悪影響が懸念される立地が、開発によって緑地帯による緩衝地帯を創出し、周囲の高密な集合住宅地の環境改善を図り、会場自体は現在まで住民の保養施設としての機能を発揮している様子は学生に大きなインパクトを持って受け止められた。
 ドイツと日本の都市の根源的な差として、日本ではまちづくりというと他のまちの人が集まる工夫をするものであるのに対して、ドイツでは「住んでこそのまち」を目指している点があげられ、その結果が、観光客が溢れてオーバーツーリズム問題が発生している日本と、今でも街並みが保たれ、住民生活が滞らないロマンチック街道の都市群の現状に表れているというお話は、特に印象的であった。
 「住む、働く、休む」の3要素が重要であり、さらには次世代を保証する子どもたちの生活を優先して考えれば「住む、学ぶ、遊ぶ」が体現されたまちづくりこそがSDGsにも適う目指すべきものであるとの視点から、住宅の形態や遊び場の確保、交通路システムの3側面について実務上の課題が説明された。中心市街地での歩行者優先区域の拡張や緑地帯の敷設、自転車専用道路の整備拡充につながっている政策方針は、「こどもにやさしいまちづくり」は環境にもやさしくなることを具現化しているという水島氏の熱のこもったご講演に、参加者は非常に熱心に聞き入った。

(政策学部准教授 小谷真理)

20240523水島氏 (101885)