政策学会講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『グローバル化とサイバーセキュリティ』
テーマ | 『グローバル化とサイバーセキュリティ』 |
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講師 | 川口 貴久氏 |
日時 | 2023年12月6日(水)14:55~16:25 |
会場 | Z41 |
12月6日に政策学会講演会として東京海上ディーアール戦略・政治リスク研究所主席研究員であり、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティトュート特任准教授でもある川口貴久氏に「グローバル化とサイバーセキュリティ」というテーマで講演いただいた。
川口氏は、サイバー攻撃が身近なメールなどを通して行われている事例としてクリントン陣営の選挙対策責任者をはじめとするアメリカ民主党への機密情報窃取事件をあげて、これは選挙介入を目的としてロシアの情報機関が実施したことを明らかにした。他にもいくつかの事例を挙げつつ、サイバー攻撃を紹介した上で、サイバーセキュリティやサイバー空間は、物理的制約を受けないと誤解されがちだが、情報インフラや世界に張り巡らされた海底ケーブルなどによって成り立っていることを説明した。
また川口氏は、サイバー空間の出現とその拡大・深化は、国際政治システムや主権国家のパワーのあり方に影響を及ぼすのかについても問題を提起した。川口氏は、主権国家は依然として、サイバー攻撃や防衛においても主要な役割を担っている一方、ウクライナ戦争に見られるように国際紛争においてテック企業がかつてないような役割を果たしている側面があると指摘した。今後も技術の進歩が続き、サイバー空間の拡大・深化が進む以上、このような主権国家のパワーとの関係や、国際紛争に及ぼす影響についても注視し続ける必要があるとまとめた。
川口氏は先端的問題について専門的知識に基づいた平易な説明を行ったこともあり、参加者からはさまざまな質問が出され、会場は大いに盛り上がった。
(政策学部准教授 富樫耕介)