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政策最新キーワード『イギリス二大政党制の「崩壊」?』

イギリス二大政党制の「崩壊」?

2025吉田先生 (110096)

投稿者 吉田 徹:2026年9月


 先の8月13日に、イギリス東部はクラクトンという保養地で補欠選挙が行われた。選挙は、2016年にイギリスのEU離脱を訴えた極右政党UKIPの創設者で、現在はリフォームUKの党首であるナイジェル・ファラージ下院議員が不正融資の疑惑に端を発する。疑惑を受けた同議員は辞職、いわば「みそぎ」のために、再度立候補したというのが経緯だ。

 この選挙は世界から注目を集めた。勝利が確実視されたファラージの政治生命がかかっていたからではなく、ファラージに真向から挑んだのが「ビンフェイス(ゴミ缶)卿」を名乗る、ゴミ箱を被るコスプレイヤーだったからだ。中の人は、ハーヴェイという、テレビ脚本家で、国政・地方を含めてすでに過去に6回の出馬経験を持ち、その公約にはサブスクの自動更新禁止や国民的歌手アデルの国有化などが掲げられた。イギリスでは「ノベルティ候補」と呼ばれる、選挙で耳目を集める候補者がいるのが伝統で、2002年には北東部のダラム市長は地元サッカークラブのマスコットが当選したこともあった。

 果たして、極右政治家とコスプレイヤーの一騎討ちという「キワモノ」同士の対決は、前者の勝利という結果に終わった。36名の候補者のうち、ビンフェイス卿は2位につけて、1万票余りにまで迫った。

 しかしワイドショーの面白ネタで済ますわけにはいかない。背景には、ここ数年で加速度的に進むイギリスの二大政党制の衰退がある。イギリス政治は、17世紀に議会制民主主義が本格的に始動して以降、とりわけ19世紀に入ってから、小選挙区制をとったこともあり、常に二大政党制をモデルとしてきた。もっとも、例えば1997年に保守党と労働党あわせた総得票率は約75%、議席率では87%を占めたのが、2024年にはそれぞれ56%と80%へと減少している。2025年の地方議会選挙のうち、イングランド地方選では、争われた5066議席の半分は労働党議席だったが、同党はその約6割を失い、保守党も4割を失った。これに代わって躍進したのが、それまで2議席しかなかったリフォームUKで、最終的射に1454議席を獲得した。それ以外にも、緑の党や自由民主党といった小政党も伸張した。

 今回の補欠選挙でも、与党の労働党も、野党第一党の保守党も当選が見込めないことから立候補を見送った。その代わりに出てきたのが、「ゴミ缶」候補だったのである。何れの先進国でも政党政治は混乱の極みにあるが、この補欠選挙は、革命や戦争、産業構造の転換など、長きに渡って風雪に耐えてきたイギリスの二大政党制の崩壊が始まったことの合図なのかもしれない。