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政策最新キーワード『ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)』

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)

2025新見先生 (110085)

投稿者 新見 陽子:2026年8月


 世界保健機関(WHO)は、2026年7月、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向け、「WHO東京事務所-UHCナレッジハブ」を開設しました。UHCとは、「すべての人が経済的困難を伴うことなく、必要なときに、必要な場所で、質の高い保健医療サービスを必要に応じて受けられること」を意味します¹。持続可能な開発目標(SDGs)においても、UHCの達成が目標3「すべての人に健康と福祉を」のターゲットの一つとして掲げられています。UHCの実現には、「保健医療サービスが身近に提供されていること」と「保健医療サービスを利用するための費用が障壁にならないこと」のいずれもが必要です²。

 日本は国際的にUHCの達成度が高い国の一つとして知られていますが、その背景には、1961年の国民皆保険の実現があります。これにより、すべての国民が公的医療保険に加入し、一定の自己負担で必要な保健医療サービスを受けることができるようになりました。また、1973年には、当時医学部のなかった県に医科大学・医学部を整備する「一県一医大構想」が打ち出され、医師の養成や地域医療体制の整備が進められたことで、医療への経済的アクセスに加え、物理的アクセスも改善しました。WHO東京事務所-UHCナレッジハブには、日本のこうした経験を各国と共有し、世界のUHC推進につなげる役割が期待されます。

 WHOと世界銀行が共同で発行している報告書によると³、2000年以降、世界ではUHCに向けて保健医療サービスへのアクセスと経済的負担軽減の両面で一定の進展があったとされています。しかし、SDGs期(2015年以降)においては、その勢いが鈍化していることも指摘されています。2023年時点では、世界人口の半数以上に当たる約46億人が必要な保健医療サービスを利用できず、また2022年には約21億人が医療費の支払いが原因で経済的困難に直面したことが報告されています。

 世界が目標として掲げる2030年までのUHC達成は容易ではありません。しかし、健康はすべての人が有する基本的人権の一つであるだけでなく、知識や技能と並び、人的資本を構成する重要な要素でもあります。その意味で、UHCの実現は、一人ひとりが健康でその能力を十分に発揮できる社会を支えるための重要な政策課題であり、今後も国際社会が粘り強く取り組んでいくことが求められます。


1. World Health Organizationホームページ(最終閲覧日 2026年7月22日)

2. 国際協力機構(JICA)ホームページ(最終閲覧日 2026年7月22日)

3. World Health Organization (WHO) and the International Bank for Reconstruction and Development (IBRD), World Bank (2025) Tracking Universal Health Coverage: 2025 Global Monitoring Report.