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政策最新キーワード『衆議院議員定数の削減は何人が適正か』

衆議院議員定数の削減は何人が適正か

2025武藏先生 (110080)

投稿者 武藏 勝宏:2026年6月


  昨年10月、自民党と日本維新の会は連立交渉において、「1割を目標に議員定数を削減する」ことで合意し、12月に共同提出した法案では、衆議院議員の定数を465議席から1割を目標に45議席以上削減し、1年以内に結論が出なければ小選挙区25議席、比例代表20議席を自動的に削減するとした。今年2月に実施された総選挙では、自民党が圧勝し、衆議院議院運営委員会に設置された衆議院選挙制度に関する協議会での現行の小選挙区比例代表並立制の見直しと併せて、今後、議員定数削減の検討がなされると予想される。

 ところで、こうした議員定数の削減が実現した場合、衆議院での委員会審議や国会の議員立法提出数にどのような影響を及ぼすのだろうか。そこで、その影響評価を現行の参議院の状況との比較に基づいて論じるのが、小稿の目的である。

 現在、衆議院・参議院とも、常任委員会は17あり、すべての常任委員会の定数を合計すると、衆議院では575名、参議院では459名の常任委員が必要である。国会法の規定では、「議員は、少なくとも一箇の常任委員となる。ただし、議長、副議長、内閣総理大臣その他の国務大臣、内閣官房副長官、内閣総理大臣補佐官、副大臣、大臣政務官及び大臣補佐官は、その割り当てられた常任委員を辞することができる」(42条2項)。衆議院では、政務官が常任委員を兼任するため、常任委員を辞するのは、議長、副議長、首相、大臣、副大臣等である。したがって、現行では、465名の定員のうち、426名が575名必要な常任委員を担うことになる。その結果、衆議院議員1議員の常任委員会所属数は平均1.35となっている。これに対し、参議院では、議長、副議長、大臣が常任委員を辞するため、248名の定員の内、243名が459名必要な常任委員を担っている。参議院議員1議員の常任委員会所属数は衆議院より多い平均1.9ということになる。この衆議院議員より参議院議員が委員会所属に関して負荷が大きいことは、衆議院と比較して参議院の委員会審議量にも負の影響を及ぼしている。2023年の衆議院の委員会審議時間は1055時間であるのに対し、参議院の委員会審議時間は910時間であった。参議院が衆議院の審議量を下回っているのは、参議院が後議院であることによる時間的制約の面もあるが、参議院議員の委員会所属の重複による人的リソースの制約も要因にあろう。

 以上のことを考えると、衆議院議員の定数削減は、委員会の審議量にも影響を及ぼすことになる。議員定数を1割削減すれば、衆議院議員1議員の常任委員会所属数は平均1.52になる。また、2割削減すれば、平均1.73になる。したがって、1割程度の削減の影響力は委員会審議量に大きな影響は及ぼさないが、2割削減は衆議院の委員会審議量を減少させることに直結しよう。

 一方、議員立法の成立数は、最近20年間では、衆議院議員提出が参議院議員提出の約6倍と衆議院が中心となっている。また、衆議院では、予算を伴う法案を提出するためには、会派の所属議員が51名以上必要である。現状では、自民党以外に提出要件を満たす政党はなく、議員定数の削減によって、野党による予算を伴う法案の提出はより困難となろう。委員会の審議量以外でも、衆議院議員定数の削減は、議員立法の提出数や成立数にも影響を及ぼすことになる。議員定数をどの程度削減するかは、委員会の審議や議員立法の成否という国会のアウトプットに影響を及ぼすことも考慮し、その適正量を検討することが必要といえるだろう。