このページの本文へ移動
ページの先頭です
以下、ナビゲーションになります
以下、本文になります

教員紹介

2026馬先生  (124911)

まー うぇんろん

馬 文竜   助手

研究分野(大学院) STEM教育と起業政策
研究テーマ(大学院) STEM教育と起業の国際比較研究
研究室 新創館210号室
メールアドレス wma@mail.doshisha.ac.jp

研究の関心(研究内容を含む)

 私の研究は、「教育はいかにして社会を変えるのか」という根源的な問いに、実証的なエビデンスをもって答えることを目指しています。特に、STEM(科学・技術・工学・数学)教育が個人のキャリア形成と起業活動に与える影響を、国際比較の視点から解明することに取り組んでいます。 

 博士論文では、米国労働統計局が実施する全国青少年縦断調査(NLSY97)の大規模パネルデータを分析し、教育と起業の間に存在する興味深いパラドックスを発見しました。STEM教育を受けた個人は、非STEM専攻者と比較して起業への参入率が統計的に有意に低い一方で、一度起業すると事業の法人化率や長期的持続可能性において顕著に優れた成果を示すのです。さらに、Big Five性格特性や認知能力テストのスコアを統制しても、この関係は頑健に維持されました。この発見は、STEM教育が単なる技術的知識の伝達にとどまらず、リスク認知能力や機会費用の合理的評価、そして事業計画の精緻化能力を涵養することで、起業の「量」ではなく「質」を高める可能性を示唆しています。

 現在は、この研究枠組みを日本と中国に拡張することに注力しています。日本は世界最高水準の理数教育を誇り、PISAの数学・科学リテラシーで常にトップクラスの成績を収めています。にもかかわらず、起業活動率はOECD諸国中最低水準にとどまっています。一方、中国は近年急速にイノベーション大国へと変貌を遂げ、深圳や杭州を中心に大学発ベンチャーが活況を呈し、ユニコーン企業を次々と輩出しています。この対照的な二つの東アジア経済圏を、起業大国である米国と比較分析することで、「制度的要因」「文化的要因」「教育システムの設計」がいかに複雑に相互作用して起業行動を形成するのかを明らかにしたいと考えています。 

 研究手法としては、傾向スコアマッチングによる選択バイアスの統制、操作変数法による因果推論、構造方程式モデリングによる媒介効果の検証、差分の差分法による政策効果の推定など、計量経済学の最先端手法を積極的に活用しています。また、定量分析を補完するため、起業家や教育政策立案者、ベンチャーキャピタリストへの半構造化インタビュー調査も実施し、統計数字の背後にある人々の意思決定プロセスや、制度と個人の相互作用を深く理解することを心がけています。 

 教育政策は、その効果が現れるまでに10年、20年という長い時間を要するため、短期的な成果指標による評価が困難です。しかし、だからこそ、長期的な視野に立った縦断的実証研究が不可欠なのです。私の研究が、エビデンスに基づく教育政策立案(EBPM)の一助となり、次世代のイノベーターを育成する社会システムの構築に貢献できれば、研究者としてこれ以上の喜びはありません。

プロフィール

2025年3月、同志社大学大学院総合政策科学研究科にて博士(政策科学)を取得。博士論文では、米国労働統計局の全国青少年縦断調査(NLSY97)の大規模パネルデータを用いて、 STEM教育が起業活動に与える長期的影響を実証的に解明しました。傾向スコアマッチングや操作変数法などの計量経済手法を駆使し、STEM教育と起業成果の間に存在するパラドックス -参入率の低さと事業持続性の高さの併存-を明らかにし、教育政策とイノベーション政策の接点における重要な知見を得ました。

中国出身。福建省で大学卒業後、中国クロールアルカリ工業協会研究員、国際産業フォーラムの企画運営などを経験。2015年に来日し、同志社大学ビジネス研究科にてMBA(グローバル経営)を取得後、博士後期課程に進学しました。英語・中国語・日本語の三言語を操り、日本・中国・米国の教育制度と起業環境に関する国際比較研究を専門としています。

受験生へのメッセージ(大学院)

【大学院生向け】

「なぜ、同じ教育を受けても、ある人は起業し、ある人は大企業に就職するのか」「なぜ、日本は技術大国なのに、新しいビジネスが生まれにくいのか」——私の研究は、このような素朴な疑問から始まりました。

総合政策科学研究科の魅力は、一つの学問分野に閉じこもることなく、経済学・社会学・政治学・経営学など多様なディシプリンを自在に組み合わせて、現実の政策課題に挑戦できることにあります。複雑に絡み合った社会問題に対して、唯一の正解はありません。だからこそ、多角的な視点と実証的なエビデンスに基づく分析が求められるのです。

私は中国で生まれ、日本で博士号を取得し、米国のデータを分析しています。四つの言語を駆使しながら、三つの国の教育制度と起業環境を比較研究しています。グローバル化とデジタル化が加速する現代において、国境を越えた視野と、データに基づく客観的な分析力は、政策研究者にとって不可欠な資質です。本研究科には、多様な国籍・文化的バックグラウンドを持つ仲間と切磋琢磨し、互いに刺激し合える知的環境があります。

「データで社会の真実を読み解きたい」「政策立案に科学的根拠を与えたい」「国際的な舞台で活躍する研究者になりたい」——そのような高い志を持つ皆さんとの出会いを、心よりお待ちしています。