このページの本文へ移動
ページの先頭です
以下、ナビゲーションになります
以下、本文になります

政策最新キーワード

少子高齢化について

投稿者 中田 喜文:2023年3月1日

投稿者 中田 喜文:2023年3月1日


データを異なるアングルから見ると少子高齢化は、現在日本の社会活動、経済活動、そして文化活動のあらゆる側面に大きなインパクトと与える現象で、同時に、そしてだからこと日本の最大の政策課題と言えます。我々は、毎年のように日本女性の出生率が低下したことや日本国民の寿命が延びたことを知り、政策では如何ともしがたい社会法則とでも呼べる日本社会の長期趨勢現象であると思い始めていませんか。

しかし、この少子高齢化の内実を少し異なる視点から見ると少子化高齢化が一律に進んでいるわけではないことが分かります。今日はこの問題を、皆さんと一緒に考えてみましょう。

少子化を語るとき、必ず使われる統計が人口特殊出生率です。この統計数値の計算方法を皆さんはご存じでしょうか。一般的には「ある期間(1年間)の出生状況に着目したもので、その年における各年齢(15~49 歳)の 女性の出生率を合計したもの。」(厚生労働省)と定義されています。この数字は、ある一時点において日本女性が生涯に出産する子供の数の予想値です。その数値が戦後まもなくの1947年には4.54人であったのが、62年後の2019年では1.36、さらに最新データの2021年には1.30と低下が止まりません。

図1 日本女性の合計特殊出生率の戦後の推移

nakata1

資料出所:「令和3年度出生に関する統計の概況:人口動態統計特殊報告」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo07/index.html

すでに述べた通り、この数値は「予想値」である点に注意が必要です。実際に日本女性が生涯に産んだ子供の数を表していません。実際の数値は、コーホート合計特殊出生率と呼ばれ、出生年別にその年に生まれた女性が15歳から49歳の間に平均的に何人の子供を出産したか、厚生労働省から「出生コーホート別にみた累積出生率」表として公表されています 。その最新数値によると、図1が始まる1947年に15歳に達した日本女性が49歳までに出産した子供の数は、合計特殊出生率の4.54の半分以下の2.04人です。また、図の最後の年である2019年に49歳に達した1970年生まれの女性の累積出生率は1.47人です。現実の少子化の進み方は、一般に使われる数値よりはるかに緩慢な変化であることが分かります。

さらに出生率を年齢層別に変化を追うと、少子化の進展が女性の年齢層によって全く逆の動きを見せていることにも驚かされます。

表1 年齢別累積出生率

    1950年コーホート 1970年コーホート 1990年コーホート
年齢 年齢
累積出生率
5年間の
累積出生率
年齢
累積出生率
5年間の
累積出生率
年齢
累積出生率
5年間の
累積
30 1.63   1.53 0.78  
35 1.94 0.31 1.89 0.36 1.21 0.43
40 2.00 0.06 1.97 0.08 1.42 0.21
45 2.01 0.01 1.98 0.01 1.45 0.04

資料出所:国立社会保障・人口問題研究所 『人口問題研究』2015年

この表が示しているのは、日本女性は、30歳以降においては、出生数をむしろ増やしている事実です。例えば1950年に15歳に達した女性は30歳から35歳までの5年間で、平均的にみて0.31人出産しましたが、1990年に15歳に達した女性は30歳から35歳までの5年間で0.43人出産しています。それ以降の年齢においても、40歳までの5年間、あるいは45歳までの5年間も同様に、より最近のコーホートでは、出生数が増えています。確かに30歳までの累積出生数は近年のコーホートでは大きく低下していますが、この間初婚年齢も大きく高齢化しており、このていかはその影響が大きいと思われます。

日本は、世界的にみて公的統計が充実しており、その多くが公開されています。近年は、その公開方法も多様化し、ネット上での公開も進んでいます。政府はe-statと呼ばれる政府統計の窓口を作成し、その窓口から多種多様な政府統計にアクセスし、ダウンロード可能となっています。政策科学を学ぶ者として、政策の根拠を考える上で、これらのデータは貴重な情報源です。1つの政策課題に対する政策を論じるとき、多様な側面から課題の原因を探り、その原因に対する効果的な対策を選択するうえで、データは大切な道しるべになります。日本の少子高齢化も、その対策が、日本における結婚制度のあり様、あるいは晩婚カップルの出産課題によりフォーカスしたものが、有効性が高いと、これらのデータは示しています。

一度、e-stat 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp) にアクセスしてみませんか。あなたの興味に合ったデータに出会えるかもしれませんよ。

前掲、結果の概要、表3
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo07/dl/01.pdf