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政策学会講演会特集

政策学会講演会(レポート)
『航空会社における地域活性化の取り組み』

テーマ 『航空会社における地域活性化の取り組み』
講師 本田 俊介 氏
日時 2025年5月29日(木)16:40~18:10
会場 Z30

 去る2025年5月29日、講師として鈴与株式会社 航空事業推進本部参与の本田俊介氏をお招きし、「航空会社における地域活性化について」をテーマにご講演いただいた。本田氏は、長年にわたり日本航空(JAL)において国内線の営業企画・路線計画・レベニューマネジメントなどの業務を歴任され、近年は執行役員としてグループ会社(J-AIR)の社長を兼任しながら地域事業にも取り組んで来られた。現在は地域航空会社の立場から地方創生やESG経営といった社会課題の解決に向けた取り組みを推進されている。
 
 講演ではまず、コロナ禍を経てJALが描く未来像「JAL Vision 2030」が紹介され、移動を通じた人と人との「関係・つながり」の創出によって、社会的・経済的価値の両立を図るESG戦略が語られた。さらに、地域事業の取り組みを通じた社会課題の解決に向けた多様なプロジェクトが紹介された。具体的には、観光地としての地域の魅力を再発見・発信する「サ旅(サウナ旅)」や、農業体験を通じて子どもや大学生に地域課題への理解を促す「地域の生産現場体験」、農泊の拡大による持続可能な農業支援など、多岐にわたる実践事例が紹介された。さらに、空港でのマルシェ開催や海外市場への販路開拓支援など、物販を通じた地域産業の活性化にも積極的に取り組まれていることが紹介された。これらの取り組みは「関係人口づくり」を目的としており、永続的な交通需要の開拓による地域の活性化と交通事業の持続可能性を高めることに寄与している。
 講演の後半では、「これからの観光」のあり方として、地域住民の暮らしの質を高める手段としての観光、すなわち「リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)」や「アドベンチャー・ツーリズム」が紹介され、観光客が一方的な消費者ではなく、地域との持続的な関係人口となることや、観光地のありのままの姿(人・文化・自然)を体験することの重要性について語られた。

 本田氏の講演は、単なる経済活動としての航空事業にとどまらず、企業の社会的責任と地域社会・経済への真摯な貢献を体現するものであり、学生にとって「交通ビジネス」と「地域・社会」の関係を深く考える貴重な機会となった。

(政策学部准教授 安達 晃史)

20250529本田氏  (115433)