以下、本文になります
政策学会講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『国際秩序の変動と米中台関係の変容:それぞれの主体における対外政策選択の背景』
テーマ | 『国際秩序の変動と米中台関係の変容:それぞれの主体における対外政策選択の背景』 |
---|---|
講師 | 吉田 知史 氏 |
日時 | 2024年12月7日(土)13:10~14:40 |
会場 | S33 |
去る12月7日、政策学会講演会に講師として博士(政治学)(同志社大学)で外資系コンサルティング企業にて中台関係などを研究する吉田知史氏をお迎えし、「国際秩序の変動と米中台関係の変容」というタイトルでお話いただいた。
まず、国際秩序について米国による一極構造が揺らいでいることと、それに合わせて各国で経済政策などあらゆる分野の政策を安全保障の観点から見直されているということが指摘された。
中国の対外強硬姿勢については、こうした国際秩序を機会だと捉えているという背景と、習近平・総書記への権力集中が進む中で安全保障や大国としての「尊厳」が重視されているという2つの背景があることが語られた。そしてそのような習近平時代の中国において、台湾は米国などの外部勢力によって統一を妨げられている「失地」であるとの位置付けがなされ、その重みづけがこれまでの指導者とは異なるが故に、統一促進に傾いているとの説明があった。
これに対して米国は対中脅威認識を悪化させ、対中強硬姿勢を貫くことのコンセンサスはあるが、その目的や手段に関してコンセンサスがなく、一貫した政策がまだ形成されていないことが指摘された。台湾についてトランプ次期大統領は、守ってもらいたければ金を払えという旨の発言を繰り返してきた。このことが台湾社会の米国に対する信頼の大幅な低下を招いており、米台関係の弱体化が台湾有事リスクを高めることにつながっているとの指摘がなされた。
土曜日開催にも拘わらず、多くの学生が集まり鋭い質問も出され、同志社大学政策学部学生の国際情勢への高い関心が明らかになった講演会であった。
(政策学部教授 月村太郎)