政策学会講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『宇宙航空研究開発機構の研究活動とその評価』
テーマ | 『宇宙航空研究開発機構の研究活動とその評価』 |
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講師 | 宮崎 英治 氏 柳瀬 恵一 氏 |
日時 | 2024年11月14日(木)13:10~14:40 |
会場 | 尋真館4階40番教室(Z40) |
2024年11月14日、政策学会講演会に講師として国立研究開発法人・宇宙航空研究開発機構(JAXA)から、研究員である宮崎 英治氏と柳瀬 恵一氏をお招きして、研究開発評価と独立行政法人評価との関係についてお話しいただいた。JAXAではH3ロケットの打ち上げ成功に見られるように、一般国民に分かり易い成果の判断規準がある一方で、研究開発に関わる日々の地味な努力ついてはそうしたモノサシがない。それをJAXAではどのように評価しているのかについて伺うことが、科学技術政策論の講義を担当する山谷からの依頼だった。
日本政府には宇宙基本法と宇宙基本計画があり、この基本の中で安全保障、国土強靱化、科学探査、経済発展イノベーションのためにJAXAは研究活動を展開している。その中でJAXAは2015年から16年にかけて研究開発法人として整備され、国家予算が投入されているため、国民に対するアカウンタビリティが強く求められる。毎年度の法人評価は所管府省(内閣府・文部官学省・経済産業省・総務省・防衛省)に報告され、またこれらの府省がJAXAに指示する中期目標成度の報告も求められるのである。
こうして、法人評価と予算に関わる膨大な作業(1000ページを超える報告書づくりと各府省への説明)が発生し、これらはJAXA研究員の研究時間を圧迫する。研究へのエネルギーが落ち、また働き方改革やワークライフバランスの大きな障害になる。
財務・予算の責任、研究への責任、個々人の人生に対する責任を果たすことが求められるので、アカウンタビリティのトリレンマ状態に陥る。華々しい成果の影で、JAXAはどこに進むのかを聴衆に考えてもらう講演会になった。
(政策学部教授 山谷清志)