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教員紹介

2025辻先生 (110094)

つじ ゆうたろう

辻 優太郎 助教

研究分野(学部) 国立大学財政・教育政策の形成過程
研究室 新創館201号室
メールアドレス yutsuji@mail.doshisha.ac.jp

研究の関心(研究内容を含む)

 近年日本の研究力が低下していること、その原因の一つは国立大学が国から受け取る基盤的な資金(運営費交付金)が減少している点にある、というニュースを目にしたことはないでしょうか。私はこれまで、この運営費交付金を研究テーマとして、以下の2つの点を分析してきました。

 一つには、運営費交付金の総額や大学への配分に関するルールがどのように決まってきたのかという点、いわゆる「政策過程」です。運営費交付金の政策過程の記述はこれまで、財務省などによる、削減や配分方法の改革に関する要求が強調されてきました。私はこれに対して、運営費交付金や国立大学を所管する文科省がどのようにこれらに対応してきたのかという点に着目することも必要ではないかと考え、実際に政策形成に関与した関係者へのインタビューも基に分析してきました。

 もう一つは、運営費交付金の各大学への配分額を決める際に、各大学の「実績」によって増減させる仕組みがあるのですが、そこで実際どのような増減がもたらされてきたのか、という点です。このように書くと非常に単純なことに聞こえますが、実際のところ資料の公開が限定的であったため、これまで十分に明らかになっていませんでした。これを解決するために、自身で資料を入手し、どのような大学が加配・削減を受けてきたのかという点を分析しました。

 また、上で挙げた一つ目の点である政策形成過程については、運営費交付金のみならず、教育政策を中心に広く関心を持っています。とりわけ昨今の、首相官邸が政策形成において強いリーダーシップを発揮する「官邸主導」のトレンドにおいて、文部科学省がどのような役割を果たしているのかという点は、強い関心を持っています。この点については教育のデジタル化という運営費交付金とはまた違った政策を事例として、海外出身の研究者や官僚として働いている方などからなるチームで、英語による共同研究にも取り組んでいます。

 私は「対象から入る」タイプのようで、分析対象となる政策・現象への強い関心に引っ張られて研究を進めてきました。これまでは、運営費交付金の「分かっているようで分かっていない」ところに興味を惹かれてきたとでも言えるでしょうか。この素朴すぎる関心を、以上のように多少なりともまとまった形の研究にできたのは、周りの方々のアドバイスがあったからに他なりません。今後は国立大学への補助金など、高等教育の財政的側面を引き続き対象として研究を進めたいと考えていますが、より一層周りの方々、そして学生のみなさんに学び、学術的にも社会的にも意義のある研究をできればと考えています。

プロフィール

1997年、北海道札幌市生まれです。背番号24をつけて4番を打っていた高橋由伸に憧れ巨人の野球選手になりたかった幼稚園、小・中・高の先生になりたかった小・中・高を札幌で過ごし、大学入学時に東京に出て一人暮らしを始めました。3年生の学部選択では、かねてから「教育」に興味を持ってきたこと、「政策」や「制度」のようなものに漠然と関心があったことから、名前に政策を冠した教育学部のコースを選択。当初は高大接続の政策過程に関心があった気がするのですが、ある時ニュースを見て運営費交付金の問題に強く興味を惹かれ、これが最終的には修士・博士と続けていくテーマになりました。

博士課程3年目の2024年には、大学への資金配分に造詣の深いBen Jongbloed先生に受け入れてもらい、ヨーロッパはオランダ、ドイツ国境に近いEnschedeにあるUniversity of Twenteで1年弱の研究滞在をしました。慣れないことも多かったですが、異なる国の研究環境に触れ、素晴らしい人々に出会い、自分の人生を間違いなく大きく変えた時間でした。研究活動とともに、21時まで明るい夏を存分に楽しみ、8時半まで明るくならない過酷な冬を乗り越えて2025年の3月に帰国し、4月から助教として政策学部にお世話になっています。直近の目標は、しばらく行けていないコンサドーレ札幌のゴール裏に行くこと、オランダ語の学習をどうにか続けることです。

講義・演習・少人数クラスについて

【学部科目】

 主に「アカデミック・スキル2」「政策トピックス」を担当します。これらの2つの授業では、私の専門分野である教育政策・行政をテーマとして、政策が形成される過程や、政策の内容を対象とした分析を行う予定です。世の中が教育政策・行政を巡る様々な言説で溢れている現代において、一歩引いた視点からそれらを考え、自分自身の見方を持てるようになってもらうことをねらいにしたいと思っています。また、「アカデミック・スキル2」については、英語での授業も担当します。これから先、「英語で何かができる」ということは、ますます重要になってくるはずです。そのためには、失敗を恐れずにとりあえず「英語で何かをやってみる」ことが大事だと考えていますので、この授業を学生の皆さんにとっての第一歩にできればと思っています。この他にも、「First Year Experience」「アカデミック・スキル1」を担当します。

【大学院科目】

 オムニバス講義の他、「英語文献読解(政治)」を担当します。多くの人にとって、英語論文は日本語論文より読むのに時間がかかるものです。途中で飽きてしまって積読になる、ということもしばしばです(私も例外ではありません)。ただし研究を進める上では、英語論文を避けて通ることはできません。この授業では、私の専門分野である高等教育政策を中心に英語論文を読みながら、今後役に立つような論文の読み方を身に付けてもらえればと思っています。

受験生へのメッセージ(学部・大学院)

【学部生向け】

私は大学に入学した時、おそらく高校の教員になりたいと思っていました。しかし入学後、研究者に漠然とした憧れのようなものを抱き、元々の「政策」「制度」のようなものへの興味も相まって、大学院に進ませてもらい、最終的には大学教員として働き始めることになりました。大学の新鮮な空気は、人生をそれまで想像もしなかった方向に変えるかもしれませんが、元来の自分の興味関心や感覚は、その根底にあり続けるものなのだと思います。もしそれが「政策」なら、この学部で良い学びができるのではないでしょうか。

【大学院生向け】

大学院を選ぶ際、指導教員選びが重要であることは言うまでもありませんが、気になったことをふらっと聞きに行ける環境も案外大事なものです。その点本研究科は、幅広い専門の先生を擁しており、大学院生にとっては贅沢な環境と言えるでしょう。フルタイム・パートタイムの方ともに、濃密な時間を過ごすことができるのではないでしょうか。また、博士課程に進まれることを考えている方は、修士から計画を綿密に立て、頻繁に更新することをおすすめします。