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教員紹介

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なかはら あきら

中原 慧 助教

研究分野(学部) 教育社会学・移民研究・格差問題
研究室 新創館202号室

研究の関心(研究内容を含む)

 現在の研究上の関心は、日本にいる移民的背景のある子どもの教育に関連する問題について、特に「日本人」の子どもとの間の格差について、データを基にした計量的な分析を通じ、その背景にある構造や機序を明らかにすることです。これまでも、教育社会学やその他の領域で、家庭の社会経済的な地位に関連した子どもの間の学力格差や進路の格差などが分析されてきました。一方で、日本においては、移民的背景のある子どもに関する知見の蓄積が少ないという課題があります。
 今後も、「特定技能」の対象拡大に代表されるように、そうした移民的背景のある人々が増加していくことが予想されている現在においては、日本の学校教育制度の中で移民的背景のある子どもがどのような経験をしているのか、どの程度の学力を獲得できているのかなど、を明らかにすることが必要です。移民的背景のある子どもが困難に直面しやすいことを明らかにする一つの手段として、計量的に分析することがあります。この手法では、「日本人」を基準に、学力にどの程度の差異があるのか、進学における差異はどの程度あるのかを明らかにすることができます。また、計量的に分析することは、移民的背景以外の家庭の経済状況などを同一の条件と仮定した場合の、移民的背景の効果を推定することもできます。
 こうした特徴を持つ手法を使用し、移民的背景のある子どもと「日本人」の子どもの間の経験や学力などの差異について、その背景にある構造や機序を明らかにすることを目指しています。現在は、社会的再生産に関する理論を参照しながら、分析結果を解釈することを試みています。

プロフィール

 大阪府生まれ。現在に至るまで関西で過ごしてきました。学部の学生の時には、中国でのトイレ市場のフィールドワークを基に日本企業の進出可能性を検討することを、1年間ゼミ形式で取り組みました。また、市役所などに女性活躍への取り組みをヒアリング調査するなどしていました。
 現在は、日本における移民的背景のある子ども(外国にルーツのある子ども、外国人児童生徒など呼び方は様々)の教育にかかわる問題、特に学力格差などの「日本人」の子どもとの間の差異を計量的に分析しています。大学院時代の日本語教室でのボランティア活動をきっかけに、日本における移民的背景のある子どもの教育に様々な課題があることを知り、現在の研究を始めました。
 この領域は、確かに、日本社会の中で人数的にも極めて限られた集団を対象にしている点で、社会的な必要性が見出しにくいといえます。一方で、日本社会の中で「見えにくい」集団であるからこそ、社会の構造的な矛盾や問題、課題が改めて浮き彫りになる領域ともいえます。そうした個々の集団に限定されない、大きな社会とのつながりを構想できる点で、「移民」だけの問題というわけではありません。そのような視点を土台に、様々な問題に取り組んでいければと思います。

講義・演習・少人数クラスについて

学部での講義科目

 授業については、日本における移民的背景のある子どもを中心に、教育に関連する問題や移民に関連する問題などを扱います。「そもそも「日本人」とは誰か?」のように、当たり前と思えるものも、そこには様々な現実や議論が存在します。また、「学力格差」とはどのような状況であり、なぜ是正が求められるのか。このような根本的な部分から始め、実態として格差の状況がどのようなものであるのかという点について、データを基に紹介していきます。また、そうしたデータの解釈には、理論的な理解も欠かせません。そうしたデータの解釈の土台となる理論についても、理解しながら、利活用できるようにします。
 また、実際上は、データ分析とはデータを解釈するだけでなく、自身がデータを入手し、加工、表現することで、個々人が伝えたいことを社会や対象者へ訴えかけることだと思います。しかし、データの加工や分析には、様々な知識や手法を用いることになります。また、ExcelやR、SPSSなどの統計処理ソフトを利用することにもなります。そして、定量(=多くの観察されたデータを対象とする)的な分析するには、実際に自身で分析を行い、試行錯誤を繰り返すことになります。そうした試行錯誤を授業の中では、ステップを少しずつ乗り越える形で、自身で分析ができるようになる授業を行います。
 また、授業には適宜ゲストスピーカーとして、学校現場などで活躍されている方をお招きし、現場での経験をお話していただく予定です。定量的な分析の結果は、「客観的」と思われがちですが、調査の段階でも、その結果の解釈の段階でも、様々な人の手や考えの影響を受けるものです。また、分析結果の解釈は現場に資することが重要です。そのため、現場での経験を聞く機会とは、何らかの調査をする上では、仮に手法が定量的な分析であったとしても、極めて重要なものとなります。そうした機会をなるべく多く設けられるようにします。

大学院科目

 定量分析には、様々な統計処理ソフトを利用することができます。私の講義では、フリーのソフトウェアであるRを用いて、実際に分析を行いながら、定量分析の手法の獲得を目指します。また、分析結果は、論文や学会報告、レポートなど、読み手に伝わるように見せなければなりません。学会ごとに異なるものの、分析結果の書式には一定の型があります。そうした、分析とその見せ方、解釈という、一つの研究における流れも理解し、実行できる能力の獲得を目指します。

受験生へのメッセージ(学部・大学院)

 政策は様々な領域に関連するものです。私たちの生活の多くは、何らかの形で政策に関連しています。また、教育という単一に思える領域においても、福祉や労働など様々な政策が関連しています。そのように、政策を学ぶとは、一つの問題にしても、様々な視点から物事を捉える基礎を身につけることに繋がります。そうした自身の視点や認識を大きく変える可能性が、大学での学びにはあります。そして、政策学部には非常に幅広い専門分野の教員の先生方が在籍しています。そのため、様々な専門分野の知見を獲得しながら、自身の関心に応じて、より探求を深めることが出来る環境にあります。こうした貴重な環境の中で、自身の可能性を大きく飛躍させてほしいと思います。