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教員紹介

川口 章 教授

かわぐち あきら

川口 章 教授

研究分野(学部) ワーク・ライフ・バランスとジェンダー平等
研究テーマ(大学院) ジェンダーまたは人的資源管理
研究室 渓水館212号室
メールアドレス akawaguc@mail.doshisha.ac.jp

研究の関心(研究内容を含む)

 ワーク・ライフ・バランスとは、仕事と私生活の調和のことです。仕事もしたいし、家事も子育てもしたい。でも両立が難しいので、夫は仕事中心、妻は家事・育児中心というのが、わが国の一般的な家庭です。どうして両立が難しいのだろう、どうすれば両立が可能になるのだろう、ということを研究しています。

 1970年頃までは、どこの国も日本と同じような性別分業が行われていました。しかしその後、多くの国では徐々に性別分業が崩れ、結婚して子どもができても女性が職業生活を続けるのが当たり前になっています。ところがわが国では、第一子出産後に仕事をしている女性は6割くらいしかいません。仕事と育児の両立が難しいからです。

 私は、仕事と私生活の調和が難しいのは、日本独特の雇用制度のためだと考えています。これまで日本企業は、「24時間企業のために働ける人」を採用し、そのような従業員を前提とした経営を行ってきました。「24時間企業のために働く」とは、企業が要求すれば、夜中でも休日でも働くし、企業の命令一つでどこにでも出張するという意味です。このような働き方ができるのは、家に専業主婦がいて、家事も育児もしなくていい男性です。ところが、最近では、このようなやり方を続けていては十分な競争力を維持できないと考える企業が増えつつあります。多様な価値観をもった人材の活躍なしに企業の発展はありえないことに気づきはじめたからです。企業はいかにして、従業員の仕事と私生活のバランスをとろうとしているのでしょうか、政府はそれに対してどのような政策をとるべきでしょうか、そんなことを研究しています。

プロフィール

 1958年、香川県生まれ。大学生になってはじめて京都で一人暮らしを始めました。受験勉強から開放された気楽さからか、入学して最初の3年間はほとんど勉強せず、サークル活動とアルバイトに精を出しました。おかげで成績は、今の制度でいうとDとFばかり。GPAの得点が0点台の学生を見ると、当時の自分の姿と重なってしまいます。何度目かの挑戦でやっと大学院に入りましたが、なかなかやりたい研究テーマがみつからず、悶々とした学生生活が続きました。

 転機は、オーストラリアの大学への留学です。向こうでは言葉の壁もありましたが、広々とした大地と抜けるような青空を見ると、いやなことはすぐに忘れてしまいました。「ジェンダーの経済分析」というその後ライフワークとなるテーマもみつかり、だんだん研究が楽しくなっていきました。

 結局、オーストラリアには計7年半滞在し、そのうち3年半はメルボルン大学で教員として勤務しました。その後追手門学院大学に10年間勤務しました。2004年、政策学部設立と同時に同志社大学へ。暇をみつけては、大好きな京都の街を散策しています。

講義・演習・少人数クラスについて

【学部科目】

 講義は、「ジェンダー政策」と「人的資源管理」を担当しています。演習でも、これらに関連するトピックを扱います。研究をする上で重要なことは、独創性のある発想、論理的思考力、意見を伝えるための表現力です。これらを身に着けるために演習では、3分間スピーチ、ディベート、統計解析、プレゼンテーションなどを行います。また、3年生の時は、他大学との合同ゼミを企画したり、研究大会やビジネスコンテストに出場したりします。

【大学院科目】

 大学院の講義は「雇用政策論研究」を担当しています。毎回、トピックを1つ取り上げ、それに関連する論文を2つ読んで議論します。トピックの多くは、ジェンダーや人的資源管理にかかわるものです。受講生は、授業までに、論文を読んでレポートを提出します。成績評価は、そのレポートと授業中の議論への貢献度によって行います。

受験生へのメッセージ(学部・大学院)

私たち教員の研究室がある建物の談話室の壁に、「倜儻不羈」(てきとうふき)と揮毫された書があります。この言葉は、新島襄の遺言にある、以下の文章から引用されたものです。「同志社においては、倜儻不羈なる書生を圧束せず、務めてその本性に従い、これを順導し、もって天下の人物を養成すべき事」(同志社では、自分の意見をはっきり言う自由奔放な学生を束縛することなく、その本性を尊重し、正しく導くことにより、世界で活躍する人物を養成すべきである)。

この言葉は、ベストセラーの本のタイトルにもある「心理的安全性」に通じるものです。「心理的安全性」とは、安心して自分の意見を述べることができる状態のことです。日本社会では、上下関係が重視され、自分の意見をはっきり言うと、立場をわきまえない人として批判されることがあります。しかし、そのような組織では、多様な意見が出ず、互いに学び合うことができません。社会にとってダイバーシティの重要性が認識される現在になって注目され始めた概念を同志社の創設者がすでに持っていたこと、また、それを同志社が大切にしてきたことを私は誇りに思います。私も学生と接するときは、謙虚さを忘れないようにしたいと思いますが、簡単ではありません。