同志社大学 政策学部

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政策学部講演会特集

政策学会講演会(レポート)
『しあわせに生きるために、いま僕たちにできること-ブータンと福井から考える、幸せな社会のつくりかた-』

テーマ 『しあわせに生きるために、いま僕たちにできること-ブータンと福井から考える、幸せな社会のつくりかた-』
講師 高野 翔 氏 鈴木 さよ氏
日時2020年 1月 26日(日)14:00〜17:30
会場新町キャンパス 臨光館2階 R207教室

1) 全体概要
「幸せの国」ブータンで、JICA職員として 国民総幸福(GNH)を軸とした国づくりに携わった 高野翔さんと、価値観や立場の違いを超えて人に寄り添うファシリテーターの活動をされている鈴木さよさんのお二人をゲストにお迎えした。
また同志社大学政策学部1回生を対象にした授業「アカデミック・スキル〜幸福学入門」の受講学生たちによる学びの成果と幸福学実践の成果発表も合わせて行った。
以下が当日のタイムスケジュールである。
①「幸福学」ってなんだろう?(佐野淳也)
・幸福研究の概要とポジティブ心理学の知見などを紹介
②「ブータンと福井から考える、幸せな社会のつくりかた」(高野翔さん)
・ブータンGNHの国づくりと 「ふくい×AI 未来の幸せアクションリサーチ」 の実践から考える、幸せな社会づくりのヒント
③「凸凹から生まれるしあわせ」(鈴木さよさん)
・発達凸凹をはじめとする「多様性が拓くみらい」と、そこから生まれる幸せとは?
④ 幸福学実践報告(同志社大学 政策学部1回生 14名)
・授業で学んだ幸福学の考え方を日常で実践した学生たちの報告
⑤ 幸福学ワークショップ『しあわせに生きるために、いま僕たちにできること』
・ゲスト、学生、参加者のみなさん全員で「幸せな生き方と社会」について対話

2)講演内容「ブータンと福井から考える、幸せな社会のつくりかた」(高野翔さん)
高野翔さんは1983年、福井県福井市生まれであり、2009年、JICAに入職し、これまでに約20ケ国のアジア・アフリカ地域で持続可能な地域づくりを担当してきた。2014-2017年まで、ブータンにて人々の幸せを国是とするGross National Happiness(GNH)を軸とした国づくりを展開された。
ブータンでは、国民総幸福(GNH)を国是として憲法に規定し、すべての政策の最上位概念として位置づけ、それに基づいた国造りを行っている。国民の幸福度を測定する様々な尺度を持っており、中には「困ったときに頼れるひとは何人いますか?」といった質問項目もあるという。物質的には、日本に比べるとまだ発展途上の国であるが、農村でも村人どうしが全員家族のように助け合っており、それがブータンの豊かさや幸せの基盤になっているという。
【参考サイト】
また高野さんは、福井新聞と日立京大ラボが共同で実施する「ふくい×AI 未来の幸せアクションリサーチ」のクリエイティブディレクターを務めており、それに関しても講演していただいた。
「ふくい×AI 未来の幸せアクションリサーチ」は、福井新聞創刊 120 周年として 2019 年3月より始動したプロジェクトであり、福井県民の声から「家族・友人」「食と農」「健康」「時間の使い方」「仕事・マイフロ」「自然」「まちつくり」「学ひ」「文化」の9分野の主観的幸福を分類・見える化し、福井の"幸せ 150 指標"を作成した。そしてAI によって 2050 年の未来シナリオ2万通りのシミュレーションを行い、望ましいシナリオとそれに向けたアクションを提案したものである。
その結果、人間関係や自然とのつながりなど、「多様なつながりや関係性」を重視した社会づくりを行うことで、県民幸福度の高い社会が実現することが示唆され、また食や農の豊かさが県民の幸福を支えていることがわかったという。
いっぽうで、共働き率が高いにもかかわらず、性別役割分業意識は旧来と余り変わっていないため、結果として女性に労働や育児・家事の両方の負担が多くかかっており、いわば女性の犠牲のもとに福井の幸福が支えられているという構図も浮かび上がってきたという。
その調査結果は福井新聞などのサイトでも閲覧可能であることも紹介された。
【福井新聞サイト】

3)講演内容「凸凹から生まれるしあわせ」(鈴木さよさん)
話し合いを「自分ごと」にして、「行動」へと結びつけるための議論の可視化や、ワークショップなどグラフィック・ファシリテーションの仕事をされている鈴木さんからは、主に「発達障害」の当事者にとって生きやすい社会をつくる視点から、多様性がつくる未来についての講演がなされた。
発達障害は、主にその当事者の「できないこと」に焦点を合わせた概念だが、いっぽうで多くの発達障害者は定型発達者に比べ得意な領域も併せ持っており、その両方の側面を合わせた「発達凸凹」と言う表現を鈴木さんは普段使用されているとの説明があった。こうした発達の特性や得意・不得意領域は、発達障害当事者に限らずわたしたちみんなが持っているものであり、そうした「弱さの情報公開」が互いに出し合える職場や地域をつくることによって、より風通しの良い社会となり、多様性が尊重される豊かな社会が実現できると述べられた。
またその鍵となるのは互いを認め合い、受容しあうことであり、それが「対話」空間であり、ファシリテーターはそうした安全・安心の場を促進する役割がある、ということも強調された。

佐野淳也(政策学部准教授)

高野翔氏

鈴木さよ氏