同志社大学 政策学部

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政策学部講演会特集

政策学会講演会(レポート)
『消費税率引上げ後の経済動向について』

テーマ『消費税率引上げ後の経済動向について』
講師 石橋 英宣 氏
日時2019年12月24日(火) 10:45~12:15
会場新町キャンパス 尋真館 3階(Z30)

 去る2019年12月24日、政策学会講演会に講師として内閣府大臣官房総務課企画官である石橋英宣氏をお迎えし、「消費税率引上げ後の経済動向について」というタイトルでお話しいただいた。石橋氏は、ご自身も関わられた2019年度10月の消費税率の引上げについて、政策現場にいる立場から、税率引上げの意義、実施上の課題や実施後の経済状況を中心に明快にご解説下さった。
 最初に、マクロ経済学の初歩、特にGDP統計について、GDPの求め方、GDPの構成要素、三面等価の原則、名目値と実質値、季節性などの基礎的諸概念について簡単な解説をされた。次に、景気変動の代表的な要因としてどのようなものがあり、各要因が「支出面から見たGDP」のどの構成要素に影響を及ぼすのかご説明下さった。それに基づき、消費税率引上げは可処分所得の減少を通じて消費を減少させ景気減速に繋がること、それでも景気を下振れさせる可能性のある消費税率の引上げが必要である理由を説明された。
 近年、高齢化により社会保障費が急速に膨らんでおり、財源の確保が困難となってきている。その結果、国の財政状況は歳出の三分の一程度を国債で賄うことが恒常化しており、累積債務は増加の一途を辿っている。その状況を改善するには、特定の世代に負担が偏らず、景気に左右されず、経済活動に対する影響が他の税に比べ相対的に小さい財源として、消費税が望ましい。また、これまでの社会保障は高齢者中心のものであったが、今後は少子化への対策として「全世代型」の社会保障へ政策転換する必要性を説かれた上で、具体的には、待機児童の解消、幼児教育・保育、高等教育の無償化、年金生活者支援、介護職員の処遇改善などの財源として消費税の増税分が充てられると説明がなされた。
 今回の税率引上げでは、景気の下振れ対策として消費の落ち込みを防ぐ対応が取られており、軽減税率、プレミアム付き商品券、自動車や住宅の購入支援、キャッシュレス決済に対するポイント還元がそれらにあたる。2019年12月現在で判断すると、前回2014年4月の税率引上げに比べて、足元の経済動向は概ね悪くなっておらず、景気の下振れ対策が効いていることを、最新のデータを用いてきめ細かに解説下さった。
 ご講演では、多くのデータが用いられ、政策を実施していくに当たって、それらデータのどこに注目するのか、特に政策効果が行き届いていない箇所等も忌憚なくお話され、第一線の政策現場に携わる際の意識や姿勢が受講生にも伝わったのではないかと思われる。最後は、令和2年度の予算に基づいて、これからの政府の政策の方向性をご説明下さり、それに対しては受講生からも質問がなされ活発な意見交換が交わされ、盛況のうちに講演会は終了した。

(政策学部教授 川上敏和)

20191224