同志社大学 政策学部

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政策学部講演会特集

政策学会講演会(レポート)
『ローカリゼーションと民際協力』

テーマ『ローカリゼーションと民際協力』
講師伊藤 徹 氏
日時2019年12月9日(月) 9:00~10:30
会場新町キャンパス 臨光館(R205)

去る12月9日、政策学会講演会に沖縄大学地域研究所特別研究員の伊藤徹氏をお迎えし、「ローカリゼーションと民際協力」というタイトルでご講演いただいた。伊藤氏は、国際協力銀行の前身である日本輸出入銀行やアジア開発銀行での勤務経験をお持ちのほか、近年は、衣食住を巡る「野生の思考」を研究テーマに、アジア各地の先住民や伝統的な生活様式を残す日本の村落で暮らす人々との交流を重ねながら、地域と地域を結ぶ交流事業を手掛けておられる。その豊富なご経験から、グローバリゼーションが進む今日におけるローカリゼーションの重要性などについてお話しいただいた。

まず、グローバリゼーションに代わる考え方として、「ローカリゼーション」とは、地域に根付いた経済・文化活動を取り戻すことであると説明された。グローバリゼーションは社会を均質化させる働きをもつのに対し、ローカリゼーションは多様性を重んじ、人と人、人と地域社会、そして人とそれを取り巻く自然との「つながり」を再生させることだと解説された。その一例として、衣食住の「衣」に着目し、沖縄県の芭蕉布づくりとフィリピンの野生のバナナを融合させるという「野生のバナナ布づくり」の取組みをご紹介され、地域の自然を生かした文化・モノづくりの大切さ、またそれらが地域と地域をつなげる大きな働きをもつことを力説された。

最後に、野生のバナナ布づくりの取組みから、どの地域・環境においても人々の暮らしにおいて欠かせないのは、楽しさ・面白さであり、それ故に文化の重要性を指摘された。近年、エシカル(倫理的)な消費といった考えが広まりつつあり、それは環境問題などを考える上で大切ではあるものの、心地よさや楽しさ、美しさを求めるといった感覚というのも、倫理観と絡みながら、人々の暮らしにおいては不可欠な要素であり、やはり文化の果たす役割は過少評価できないことを強調され、講演を締めくくられた。講演会には一般の方の参加もあり、参加者は伊藤氏の色とりどりの写真を交えた講演に熱心に聴き入っていた。
(政策学部教授 新見 陽子)

講師写真(伊藤 徹 氏)