政策学部講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『日本の貧困問題 -その現状と政府の役割-』
テーマ | 『日本の貧困問題 -その現状と政府の役割-』 |
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講師 | 浦川 邦夫 氏 |
日時 | 2019年10月14日(月) 10:45~12:15 |
会場 | 新町キャンパス尋真館(Z20) |
去る10月14日、政策学会講演会に九州大学経済学研究院准教授の浦川邦夫氏をお迎えし、「日本の貧困問題-その現状と政府の役割-」というテーマでお話をいただいた。浦川氏は2007年3月、京都大学大学院経済学研究科博士課程を修了後、神戸大学大学院経済学研究科COE研究員を経て、2009年4月より九州大学大学院経済学研究院准教授に就任されている。
講演では、まず、相対的貧困率の国際比較をもとに、日本社会の貧困・格差の現状について説明され、2016年時点の日本の貧困率が約15%(4人家族で250万円未満の所得水準に相当)と、OECD諸国の中で9番目に高い値であることを紹介された。加えて、生活保護を受給している被保護者世帯数が勤労世帯において大幅に増加している実態を示され、働ける世帯の雇用機会の喪失が、生活保護率の上昇とともに、親の就労環境の悪化に起因する子どもの貧困率の拡大をもたらしていることを、様々なデータを用いつつ、丁寧に解説された。
講演後半では、貧困・格差に対する税制および社会保障制度を通じた政府の政策対応を取り上げられた。近年は上昇しているとはいえ、生活保護率は国際的にみると低く、生活保護の漏給が発生している可能性が高いことや、勤労世帯に対する現金給付型の社会支出の対GDP比がOECD諸国平均の半分にも満たないことなどを指摘、失業リスクの高い非正規雇用者や、低所得かつ長時間労働を甘受せざるを得ないひとり親家庭などへの公的な支援が不足しているとの見解を披歴されて、講演を締めくくられた。貧困解消に向けた政府の所得再分配政策が不十分であることに警鐘を鳴らす浦川氏の主張が聴講した学生達に伝わり、熱のこもった素晴らしい講演であった。
(政策学部教授 田中 宏樹)
