政策学部講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『どうする地方創生-持続可能な地域づくりの方策とは-』
テーマ | 『どうする地方創生-持続可能な地域づくりの方策とは-』 |
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講師 | 川崎 一泰 氏 |
日時 | 2019年6月17日(月)14:55~16:25 |
会場 | 今出川キャンパス至誠館(S22) |
去る6月17日、政策学会講演会に中央大学総合政策学部教授の川崎一泰氏をお迎えし、「どうする地方創生-持続可能な地域づくりの方策とは-」というテーマでお話をいただいた。川崎氏は2000年3月、法政大学大学院社会科学研究科博士課程を修了後、東海大学政治経済学部准教授、東洋大学経済学部教授を経て、2019年4月より中央大学総合政策学部教授に就任されている。
講演では、まず、地方衰退の現状について、地域ブロック毎の人口移動の推移をもとに解説され、若年層を中心とする東京圏への継続した人口流入超過(東京圏以外の流出超過)が、地方圏での人口減少の主因であることを指摘、都心への人口集中抑制策の必要性は一定程度認められつつも、地域間の人口格差の根本的な解消にはつながらないとの見解を示された。その上で、川崎氏は、地方交付税交付金や国庫支出金等による従来型の地域振興策では、補助金支出を前提に政策の中身が後付けされる現象を引き起こすだけで、持続可能な地方の内発的発展にはつながらず、補助金獲得を目指す横並び競争が、地方の疲弊と衰退に拍車をかけている可能性を、具体的事例をもとに丁寧に解説された。
講演後半では、地方の内発的発展にとって、人的資源と物的資源をともに厚くしていくことの重要性を強調され、高松市丸亀町商店街や長浜市黒壁など、民間主導の資金調達で街の再開発に取り組んでいる事例、飯田市産業センターや三島市グラウンドワークなど、地域課題への当事者意識を醸成するための地域人教育に打ち込んでいる事例などを紹介、地方の多様性を活かし生み出す仕組みの構築(プラットホームビルディング)が重要であるとの見解を披露された。その上で、人口移動のさらなる活発化が予想される中、地域間の多様な競争を制し、持続可能な地域を構築していくためには、人的資源や物的資源への再投資とそれを可能にする収益事業の存在が欠かせないとして、民主導の地方再生とコミュニティ・ビジネスへの税金投入も辞さない自治体の発想転換が必要であることを力説され、講演を締めくくられた。地方再生には、住民自らによるヒトとカネ両面からの支えが重要であるとの川崎氏の明確なメッセージが聴講した学生達に伝わり、熱のこもった素晴らしい講演であった。
(政策学部教授 田中 宏樹)
