政策学部講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『街を創るということ―ドイツ流街づくりの薦め』
テーマ | 『街を創るということ―ドイツ流街づくりの薦め』 |
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講師 | 水島 信 氏 |
日時 | 2019年5月23日(木)10:45~12:15 |
会場 | 新町キャンパス尋真館(Z30) |
去る5月23日、政策学会講演会に水島信氏をお迎えし、「街を創るということ」というタイトルでお話いただいた。
まず、ドイツと日本の都市の根源的な差として、ドイツの都市は明確な輪郭である市壁を持っているという特徴が取り上げられた。市壁の存在は、共同体の自治が及ぶ範囲が明確に限定されていることを意味する。都市はコンパクトで境界が明確なのが当たり前であるにも関わらず、日本でコンパクトシティという言葉が使われるのは、都市という概念が明確でないからだという指摘は、大きなインパクトをもって学生に受け止められた。
また、都市デザインの本質とは、ただ統一感のある綺麗な街並を整備することではなく、住む人が快適であり、市民一人ひとりの生活を重視した街を創ることだという。質的な統一があることが重要なのだと熱く語られていたことが印象的であった。
ドイツでは「公共の利益」「社会の安穏」「市民の意見」という概念を基本として建設指針計画が自治体主導で作成される。その際に公聴会による直接的市民参加がなければ政策法的に成立しない制度も取り入れられている。
日本でも行政が街づくりを主導する場合、企業の意向を重視するのではなく、そこで生活する市民の意見を尊重することが求められる。そのために様々な価値観の合意を得る手法を取り入れ、公共の利益と社会の安穏の基準を市民の共通認識として共有することが必要であるという。水島氏の熱のこもったご講演に、参加者は非常に熱心に聞き入った。
(政策学部准教授 小谷 真理)
