政策学部講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『EBPM(証拠に基づく政策立案)による産業振興策の策定』
テーマ | 『EBPM(証拠に基づく政策立案)による産業振興策の策定』 |
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講師 | 松田 敏幸 氏 |
日時 | 2019年5月16日(木)10:45~12:15 |
会場 | 新町キャンパス臨光館(R204) |
去る5月16日(木)に、宇治市産業地域振興部長の松田敏幸氏にお越し頂き、「EBPM(証拠に基づく政策立案)による産業振興策の策定」というテーマで講演頂いた。松田氏は同志社大学を卒業後宇治市に入庁され、政策室経営改革担当課長、健康福祉部子育て支援室長、市民環境部長などを経て現在は産業地域振興部長を務められている。その豊富な行政経験から、人口減少社会において地方自治体がおかれている現状について、宇治市の実例を交えながら大変分かりやすく解説された。
地域の産業基盤が失われ、自治体の人口が減少することは地方税収の減少にも繋がることとなり、公共サービスの提供をも危うくする可能性があるが、市町村によっては産業振興を最近まで行政の重要項目として捉えていなかった。宇治市が2010年に策定した今後10年間の「総合計画」の中でも、「まちづくりの方向性」として挙げられている6項目に「経済・産業」という言葉は全く言及されていない。
活力ある地域経済を育成するためには、先ずその現状を正確に把握する必要がある。松田氏は「自らの姿を鏡に映してみる」という分かりやすい例えで、宇治市が産業連関表を整備して、自らの市域の産業構造を理解する手段として活用した経緯を解説された。現在では国政レベルではデータを基礎とした政策決定(EBPM)が唱えられているが、宇治市では以前よりそれを実践していた。
宇治市の産業戦略策定にいたる過程を解説された松田氏の講演は、具体的な実例に裏打ちされた大変有意義な内容であった。本学の学生だけでなく、中央官庁・他自治体からの来聴者もあり、EBPMへの関心の高さも印象的であった。
(政策学部教授 川浦 昭彦)
