同志社大学 政策学部

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政策学部講演会特集

政策学会講演会(レポート)
『気候変動と再生可能エネルギーに関する法と政策 -ニュージーランドの事例から-』

テーマ 『気候変動と再生可能エネルギーに関する法と政策 -ニュージーランドの事例から-』
講師 David Grinlinton 氏
日時2020年1月9日(木) 10:45~12:15
会場新町キャンパス 尋真館 3階(Z30)

去る1月9日、政策学会講演会にニュージーランド(以下、NZ)、オークランド大学法学部教授David Grinlinton氏をお迎えし、「気候変動と再生可能エネルギーに関する法と政策 -ニュージーランドの事例から-」というタイトルでお話いただいた。講義はまず、気候変動に関わる国際法の動向を踏まえNZの国内法と政策を論じ、次に、再生可能エネルギーの大幅な利用促進に関わる法政策を解説された。また、再生可能エネルギーに関するプロジェクトの承認やその条件付けに対して環境裁判所が果たす固有の役割についても触れられた。
NZの法政策の中でも、特に2019年の改正気候変動対策法、いわゆるゼロ・カーボン法は大変興味深いものであった。パリ協定に基づき、2050年までにGHGs(生物起源のメタンを除く)排出量0を目標とし、生物起源のメタンの排出量を2017年のレベルより2030年までに10%削減し、2050年までに24〜47%以下とすること、気候変動に対する適応政策と緩和策の実施を政府に求め、長期的な気候変動目標の達成に関して政府に助言をし、その進捗状況を監視することを目的とした気候変動委員会を2020年に独立機関として設立するなど、その内容の豊富さは驚きをもたらした。
他方で、2008年と2013年の最高裁判決が紹介され、再生可能エネルギーの開発行為においてのみ気候変動に及ぼす影響が考慮されるとするその内容は、質疑を交えて学生達の大きな関心を導くものであった。
その他に、国の主要産業である農業や特に畜産業に関わる事項については、NZにおいてもその政策内容が積極性を欠くものになっていること、自然を活用する再生可能エネルギーの開発では、時にマオリ文化の保護政策と対立し、うまく進められない状況が生じていることなど、国や地域の事情との関係にも触れられた。
Grinlinton教授による熱のこもった授業は、日本語のキャプションや図表、写真を多用した工夫された資料が用意されたこともあり、英語での講義であったが大変わかりやすく、参加者は非常に熱心に聞き入った。

小谷真理(政策学部准教授)

20200109