同志社大学 政策学部

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政策学部講演会特集

政策学会講演会(レポート)
『人工知能で社会はどう変わるのか』

テーマ『人工知能で社会はどう変わるのか』
講師嶺 竜治 氏
日時2018年11月19日(月)10:45~12:15
会場新町キャンパス臨光館(Z30)

去る11月19日、政策学会講演会に京都大学産官学連携本部特定准教授の嶺竜治氏をお迎えし、「人工知能で社会はどう変わるのか」というテーマでお話をいただいた。嶺氏は1995年3月、早稲田大学大学院理工学研究科修士課程を修了後、(株)日立製作所中央研究所に入社、2015年4月、同研究所基礎研究センター主任研究員に就任の後、2016年4月より京都大学産官学連携本部特定准教授および日立京大ラボ ラボ長代行主任研究員に就任されている。

講演では、まず、ご専門である人口知能、機械学習の知見をもとに、IBMが開発したチェス対戦コンピュータDeep BlueやGoogleが開発した囲碁対戦プログラムAlpha Goの事例を交えつつ、「人口知能(AI)」という言葉の定義について学説を紹介された。そこでは、AIの機能を、ビックデータの高速処理を主とした人間の認知・判断力の支援のためのツール(機械学習)と見なす立場と、人間の脳の構造自体を再現することで人間の創造・開発力を代替するツール(深層学習)と見なす立場との間で、学術的な論争があり、AIの定義そのものが、明確には定まっていないことを丁寧に解説された。

講演後半では、金融、セキュリティー、ものづくり、医療、教育、交通、農業など、幅広い産業において、AIの導入・活用が模索されている現状を、豊富な具体例を交えて紹介しつつ、極端な待望論や失望論がでないよう、AIに対する知識や理解を深めることの重要性を力説された。日本においても、「AIは東大に入れるか」や「AIは中高生と並ぶ読解力を持ちうるか」といったAIの可能性と限界を理解するための実験的なプロジェクトが進行中であることに触れつつ、ビックデータの高速処理について比較優位性を持つAIの本質が、冷静に理解される状況が生まれつつあるとの見解を示された。最後に、AIの効果的な活用に向けて、個人のプライバシー保護に細心の注意を払いつつも、匿名化されたビックデータのオープンデータ化を一層進める「AIの民主化」が必須であることを力説し、講演を締めくくられた。AIの正しい理解のもとに人と機械のコミュニケーションを高める視点が重要という嶺氏の明確なメッセージが聴講した学生達に伝わり、熱のこもった素晴らしい講演であった。

(政策学部教授 田中 宏樹)

政策学会講演会(レポート)『人工知能で社会はどう変わるのか』