政策学部講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『「大相撲の女人禁制」とスポーツにおける女性差別』
テーマ | 『「大相撲の女人禁制」とスポーツにおける女性差別』 |
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講師 | 内海 和雄 氏 |
日時 | 2018年6月15日(金)13:10~14:40 |
会場 | 新町キャンパス尋真館(Z30) |
2018年6月15日に、一橋大学および広島経済大学の名誉教授である内海和雄氏をお迎えし、「『大相撲の女人禁制』とスポーツにおける女性差別」をテーマにご講演いただいた。冒頭に披露された自作の民話が受講生の爆笑を誘い、にわかに和んだ雰囲気のなかで「女性差別」の背景へと話題が移っていった。まず古代奴隷制の時代、そして中世の封建社会はともに女性が抑圧された時代であったが、近代以降の資本主義社会の中で、労働力として女性の社会進出が求められ、結果として女性が解放される条件が生まれたという説得的な議論が展開された。そのうえで、大相撲における伝統の創造について詳しく触れられた。そこでは、1)明治の文明開化の時代に、大相撲は政府から前近代的で野蛮だとされ、相撲協会は危機に瀕したこと、2)明治期に政府の意向に合わせる形で神道的儀式を取り入れ、大相撲がその危機を逃れたこと、の説明がなされ、大相撲が女人禁制の論拠としている「伝統」とは同協会の存続のために創られた「伝統」であると指摘された。こうした背景にもとづく大相撲の女人禁制について受講生から様々な意見が出され、活発な議論が交わされた。「大相撲の女人禁制」を切り口とした今回の講演は、スポーツ、伝統、神事、差別について多角的な検討を深める大変有意義な機会となった。
(政策学部教授 川井 圭司)
