政策学部講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『民主主義の危機?-ポピュリズムとナショナリズムについて考える-』
テーマ | 『民主主義の危機?-ポピュリズムとナショナリズムについて考える-』 |
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講師 | 白川 俊介 氏 |
日時 | 2019年1月19日(土)10:45~12:15 |
会場 | 新町キャンパス良心館(RY101) |
2019年1月19日、講師として白川俊介さん(関西学院大学総合政策学部)をお招きして、「『民主主義』の危機-ポピュリズムとナショナリズムについて考える」というタイトルで御講演をいただいた。言うまでもなく、ポピュリズム的な政治は現在の国際関係において看過できない重要なイシューである。他方で、かつては典型例としてアルゼンチンなどのケースが取り上げられてきたように、ポピュリズムは民主主義の「敵」であるという文脈で論じられることが一般的であった。しかしながら、現在のポピュリズムに関する関心はいわゆる先進民主国家における現象から発している。
講演では、ポピュリズムを単なる「大衆迎合主義」として捉える誤りが指摘され、そもそもポピュリズムがある意味で「デモクラシー」そのものであるという意見が述べられた。更に、ツヴェタン・トドロフやカス・ミュデ&クリストバル・カルトワッセルの議論が紹介され、ポピュリズムと右派的(ナショナリスティック)なものを同一視する短絡性が明らかにされた。また、先進民主国家においてポピュリズムが見られる要因として、新自由主義的グローバル化の経済的影響(ブランコ・ミラノヴィッチの「エレファント・カーブ」)、新自由主義的グローバル化の政治的影響(ダニ・ロドリックの「グローバル化のトリレンマ」)、思想の貧困(ジョン・グレイらによる「保守の死」)が挙げられた。最後に、解決策としての「ソーシャル・リベラル」の必要性、そしてそれを提示できる可能性がある「リベラル・ナショナリズム」論(デイヴィッド・ミラー、ヤエル・タミール、ガッサン・ハージ)が紹介された。
ポピュリズムに関する非常に複雑な錯綜した問題群を分かりやすく解説する白川さんの講演には「目から鱗」の部分が随所にあり、20名を超す学外からの参加者もポピュリズムを巡る問題群に関する十分な理解をなされたのではないかと考えている。
(政策学部教授 月村 太郎)
