政策学部講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『地域政策におけるゼロ・ウェイスト~世界の暮らしと廃棄物政策の現状~』
テーマ | 『地域政策におけるゼロ・ウェイスト~世界の暮らしと廃棄物政策の現状~』 |
---|---|
講師 | 坂野 晶 氏 |
日時 | 2017年12月19日(火)13:10~14:40 |
会場 | 新町キャンパス尋真館(Z30) |
去る12月19日、政策学会講演会に講師としてゼロ・ウェイストアカデミー理事長である坂野晶さんをお迎えし、「地域政策におけるゼロ・ウェイスト~世界の暮らしと廃棄物政策の現状~」というタイトルでお話いただいた。上勝町は徳島県の真ん中あたり、山間部の急峻な地域に家々が点在し、棚田を作って生活してきた地域である。80%が森林という特徴的な地形をもち、さらに人口は1500人余りといわゆる過疎化、高齢化が進むなかにあって、厳しい環境条件下でどのようにごみの収集等の廃棄物処理を進めていくかを考えることがとても示唆的であった。
まず、坂野さん自身の一週間の生活の中で出たごみが示されたことは大きなインパクトを与えた。ごみの排出抑制を意識していても一定量のごみが出てしまうこと、パッケージ等ごみになりがちなものの傾向を学生は認識し、ごみ問題と私たち人間の生活との密接な結びつきや問題の切迫性をリアリティをもって理解した。
NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーは、日本で初めての「ゼロ・ウェイスト宣言」の取組を上勝町で、さらには世界に向けて推進するために2005年に設立されたものであるが、その目指すところは、2020年までに焼却・埋め立て処分しか選択肢のない「ごみ」をゼロにすることであることを強調され、日本の焼却処理率の高さと焼却処理がもたらす社会的コスト、環境負荷、その限界を指摘され、燃やすことを前提とすることにそろそろ疑問を投げかけるべきではないかと訴えられた。45分別(実質60分別)に及ぶ廃棄物処理の運営管理が上勝町という小さな自治体で行われていること、そのリサイクル率が80%近くに及んでいることは学生に驚きをもって受け止められていた。また、世界からも注目され海外視察者が後を絶たないことや今夏、マレーシアのショッピングモールに上勝町にあるリユース品の無料交換所「くるくるショップ」をモデルとした交換所「KuruKuru くるくる」がオープンするなど、上勝町から世界へ「ごみゼロ」の動きを発信していることが印象的であった。平成28年から新たに「ゼロ・ウェイスト認証制度」を設立し、認証店舗を通じてゼロ・ウェイストの考え方を発信する試みは興味深いものであった。多くの写真やデータ等の資料を交えての講演は視覚的にもインパクトがあり、坂野さんの熱のこもったご講演に参加者は非常に熱心に聞き入った。
(政策学部准教授 小谷 真理)
