政策学部講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『子育て支援施策の狙いと意義』
テーマ | 『子育て支援施策の狙いと意義』 |
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講師 | 安岡 匡也 氏 |
日時 | 2016年11月7日(月)10:45~12:15 |
会場 | 同志社大学今出川キャンパス 良心館(RY302) |
去る11月7日、政策学会講演会に関西学院大学経済学部教授の安岡匡也氏をお迎えし、「子育て支援施策の意義と狙い」というテーマでお話をいただいた。安岡氏は2006年3月、神戸大学大学院経済学研究科博士後期課程を修了後、北九州市立大学経済学部准教授を経て、2016年4月より関西学院大学経済学部教授に就任されている。
講演では、まず、日本における出産育児に対する支援施策として、育児休業制度、時短勤務、育児休業給付、出産育児一時金、出産手当金等を取り上げ、制度の概要、特徴、課題や問題点等について解説された。現状では、育児休業の取得が法律で認められているものの、適用期限である1年以内に、保育所の入所にめどを立てないと職場復帰が難しいこと、出産に伴う経済的負担の軽減策である出産手当金は、健康保険の被保険者以外や国民健康保険の加入者は支給対象とはならず、就業継続・非継続の状況や、加入する健康保険の種類によっては、負担軽減の恩恵を被れない可能性があることを、配布資料をもとにわかりやすく丁寧に解説された。
講演終盤では、経済的困窮家庭への育児支援施策に焦点を絞り、児童手当と児童扶養手当との違い、母子福祉資金貸付金や学習ボランティア派遣事業等のひとり親家庭への生活支援や経済支援の現状について、解説された。階層の再生産や貧困の連鎖を断ち切るために、経済的困窮家庭に育つ子どもに対する教育機会の確保が重要であるにも関わらず、児童扶養手当の支給対象家庭における子どもの大学進学率が低いことを指摘、奨学金や授業料減免等の充実によって、ひとり親家庭の子どもへの高等教育段階への経済的支援をより手厚くする必要があることを力説された。出産育児を抱える利用者の利便性に配慮したきめの細かい制度の充実・強化が必要であるとの安岡氏のメッセージが明確に伝わり、熱のこもった素晴らしい講演内容であった。
(政策学部教授 田中 宏樹)
