政策学部講演会特集
政策学会講演会(レポート)
『Disaster Relief Cooperation among Japan and Asian Pacific
(日本とアジア太平洋の災害救援・防災協力)』
テーマ | 『Disaster Relief Cooperation among Japan and Asian Pacific (日本とアジア太平洋の災害救援・防災協力)』 |
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講師 | ロサリー・ホール 氏 |
日時 | 2016年6月23日(木)10:45~12:15 |
会場 | 同志社大学新町キャンパス 臨光館(R204) |
6月23日、政策学会講演会に講師としてフィリピン大学ビサヤ校の政治学者、ロサリー・ホール(Rosalie Hall)教授をお迎えし、「日本とアジア太平洋の災害救援協力」というタイトルでお話をいただいた。
国際的な規範では、「災害救援支援においては、軍の装備の利用は最後の手段」とされている。災害救援は主権国の任務であり、また、文民によって行われるべきであるからである。
ロサリー教授の出身国フィリピンは毎年、巨大台風によって甚大な被害を受けている。開発独裁体制の負の遺産を背負うフィリピンはじめ多くの東南アジア諸国では、政府機関や自治体がじゅうぶんな災害対策予算や装備を持っておらず、災害が起こるとまず出動するのは軍隊である。
2013年11月、フィリピンのビサヤ地方は、過去に例を見ない台風「ハイヤン」に見舞われた。フィリピン政府は日本の自衛隊を含む複数の国の軍組織の救援活動を受け入れた。しかし、各国軍の支援内容を調整するためのプラットフォームは統一されておらず、自衛隊は主に医療を提供したが現場で求められているのは瓦礫除去であったり、韓国軍は発災後1年もフィリピンに駐留したりと、上記国際規範と相いれない現実があった。ロサリー教授はこうした問題を、受入国の立場から、実例を交えながら明快に指摘された。
英語講義であったため、90分の間に2度、グループ・ディスカッションの時間を設けた。質疑応答では、大規模災害において民間の物流企業が果たすべき役割や軍隊との協力はどうあるべきか、そもそもなぜ自衛隊は海外で活発に活動できないのか、など質問が寄せられた。英語による講義ではあったが、参加者は熱心に傾聴し、ディスカッションの時間には互いの理解を確かめ合っていた。
(政策学部助教 木場 紗綾)

木場 紗綾(政策学部助教)