同志社大学 政策学部

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政策学部講演会特集

政策学会講演会(レポート)
『景観と保護 –DENKMALSCHUTZと文化財保護』

テーマ『景観と保護 –DENKMALSCHUTZと文化財保護』
講師水島 信 氏
日時2016年6月21日(火)13:10~14:40
会場同志社大学新町キャンパス 臨光館(R204)

2016年6月21日、政策学会講演会に講師としてドイツ在住の建築家である水島信氏をお迎えし、「景観と保護 - DENKMALSCHUTZと文化財保護」というタイトルでお話いただいた。水島氏は、40年以上にわたりドイツを中心に建築家として活躍され、日本でも多くのマンション建築紛争や景観問題等に携わってこられた。このようなご経歴から、まちに暮らす人々の生活者の視点からみたまちづくりとは何かを具体的な事例を交えて語られた。

まず取り上げたのは泉岳寺の事例である。赤穂浪士の墓石が並ぶ高輪泉岳寺の中門を真横から覆い被さるような八階建ての共同住宅が建設されたことから、水島氏は美しい環境が著しく破壊されるという住民の危機感や、只管打座(しかんたざ)の修行に不都合であるという僧侶の意見は完全に無視されている、と指摘する。住民は世界遺産登録によって保護を考えたが、そもそも日本では文化財施設周辺の景観が侵害されても、文化財とその周辺の景観を保護すべき日本の法令が規制の強制力と執行力を持たない状況に、世界遺産認定条件が何の影響も与えないということを認識していない点がドイツと大きく違うことを述べた。ドイツの事例として「バイエルン州記念物保護法:DENKMALSCHUTSGESETZ BAYERN」「ベルリンの世界遺産集合住宅群」を取り上げ、世界遺産の概念定義を行いながら、日本とドイツとの景観・文化財保護について言及し、最後には個人の所有権と経済活動が優先される日本の文化財保護法を批判し、歴史的文化資産の保存という領域だけに限らず、日本のまちづくり全体の問題点について看取した。

水島氏の篤実かつ思いの伝わる講演は学生にも伝わったようで、どんどん話が展開していく水島氏の言葉に遅れないよう一生懸命メモを取る様子が見られ、質問をする学生も多数見られた。

(政策学部准教授 小谷 真理)

政策学会講演会(レポート)『景観と保護 –DENKMALSCHUTZと文化財保護』