同志社大学 政策学部

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観光って、経済政策ですか?

投稿者 井口 貢:2019年10月1日

投稿者 井口 貢:2019年10月1日
具体的なその人のお名前はあげませんが、一年ぐらい前に「観光とは経済政策である」と発言された方がいました。社会的な影響力が強く、基礎自治体で日夜観光振興に腐心する行政職員の方々には特に大きく響いたに違いありません。また更にそれより一年くらい前のことですが、SNSから流言飛語のように流れてきた文言には、驚きを禁じ得ませんでした。

曰く「IR法とカジノは日本の観光の最後の切り札である」と。これらの発言や流言には、僕は全く首肯することができません。過度なまでに経済効果の向上を目指すことに偏重しすぎた観光政策が、現状のオーバーツーリズムや観光公害、インバウンドと爆買い等々の社会問題を生んできました。目に見える直近のお金を目論む観光政策は、地域社会とそこに住まう人たちを100年後まで幸福に導くことはできないと思います。

観光振興を巡る間違った発想に何が欠けているのでしょうか。それを一言でいえば「人文知」の欠落といわざるを得ません。さらに具体的に言えば、三つの「しごころ」(“おやじギャグ”のようで恐縮ですが)、すなわち「史心」「誌心」「詩心」がそれに当たります。

屋上に屋を重ねますが、中国の故事成語を五つ借りてみることにします。
「観国之光」「努力発国光」「近説遠来」「犬馬難、鬼魅易」「巧詐不如拙誠」 
現実の観光政策や、少なからずの観光学は、この三つの「しごころ」と五つの故事成語が忘却されているような気がしてなりません。冒頭に記した、ある方の発言とSNSの流言飛語は、まさにそうではないでしょうか。

何よりも観光とは、文化の継承と粗製乱造ではないその新たな創造を、公共教育の視点から実現していくことを政策の基調に置かねばならないものだからです。