同志社大学 政策学部

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テレビの討論番組

投稿者 Ofer Feldman:2019年9月1日

投稿者 Ofer Feldman:2019年9月1日
政治コミュニケーションに関する研究の中でも、政治家のコミュニケーションに焦点を当てた研究は演説を中心として行われており、会話分析の枠組みを用いてテレビ放送の政治インタビュー(討論番組)を中心に扱った研究は、特に日本では十分に行われていないという現状である。

テレビで行われる政治インタビューは、一般的な会話とは異なり、インタビュアー(ジャーナリストなど)とインタビューされる側(政治家)は政治的な話題や政治問題を取り上げ、国民が十分な情報を得られるために様々な角度から話し、政治家は自らの行動や意図について説明することが求められる。その目的を踏まえて、インタビュアーは独自の質問を行い、政治家が関わっている公共政策や政治活動の真実を明らかにすることを試み、得られた回答に対して議論や批判、対立を行うこともできます。また、政治家は回答することによって有権者に向けてアピールや説得し、支持を確保するための話術も行う。

このような雰囲気の中で、ジャーナリストと政治家の間に対面的な手続きがデザインされており、独特の特徴がありながらも、インタビュアーとインタビューされる側の機能によって構造化された一連のルールや規範が存在する。

第一に、政治インタビューは、実際の出来事から離れたジャーナリストと政治家で起こる表舞台の議論であり、「背後にいる聴衆」 (Overhearing Audience)の関心を寄せ、期待に応えるために発言したことと内容を形成する。インタビュアーと政治家は、両者は面白いトークショーを目指し、同時にインタビュアーは視聴者とテレビ組織の同僚の双方を考察し、パフォーマンスの成功や失敗は将来のキャリアを左右するから同僚や会社の視点で物事を考慮する。一方、政治家にとって、この政治番組は多くの国民に直接話しかけられる良い手段であり、特に有権者に対して彼らの考えを伝えられ、自らや所属する政党の肯定的なイメージを高めることで、政治的な抵抗勢力や挑戦者を攻撃する機会にもなる。

第二に、「話者交替」(Turn-taking System)はインタビュアーとインタビューされる側の対立する機能を明確にする。両者は、二つの過程において聴衆へ対話を生み出すことを試みる。そのため、インタビュアーは議論のトピックを選ぶ責任を持ち、インタビューされる側に質問を行い、回答を求め、対話の持続を監視しながら結論づけられる。またインタビュアーは、様々な争点について政治家の立場を特定し説明するために、彼らは敵対主義と客観主義の間でバランスを保つことでインタビューを行うことが求められ、特定の政治家や政党を好まないことによって中立の立場を維持する。一方では、インタビューされる政治家の役割は、個人や政党、精度を最も代表するように質問に答えることである。これらの役割分担は政治インタビューを構造化する基本的なルールに挑戦する。しかし、これらの規範的な期待からの逸脱は、必ずしも認められ、修正されるとは限らない。インタビューは政治家に大規模な聴衆へ話す機会を与え、所属する政党の議題を促進し、政治家はインタビューへコントロールを行使しようとする利点を与える。そのため、話す手続きを中断させたり、回答する前後に話題を意図的に変更したり、インタビュアーの質問と関係がないかどうかにかかわらず質問を無視し、議題と話題を変更する。この現象は「議題シフト手順」(Agenda Shifting Procedures)といわれる。

政治インタビューの他の独特な特徴はインタビューされる側の政治家の回答は曖昧なコミュニケーションスタイルを持ち、尋ねられた質問に対して様々な戦略を利用し直接的または明白的な回答をすることを避ける。イギリスや台湾、日本などの政治討論番組における適切な回答の低い割合についてはいくつかの研究によって示されている。

政治インタビューは、司会者と政治家と視聴者の三者によって構成される。とくにテレビの政治インタビュー番組を視聴する有権者は、政治家の言説に惑わされないようにしなければならない。そのためには政治家がいかに質問を回避し、どのように受け答えをしているのかを理解することが求められる。また、質問の形式を踏まえることでインタビュアーが追及しているのかどうかが区別でき、重要な質問を認識することが可能となる。こうした視点を持つことによりテレビの討論番組の見方が変わると言われ、またこの分野においてより多くの研究を行うことによって政治文化における政治的コミュニケーションの一つの側面の重要性と働き方についても明らかにできるといえよう。

参考文献: 木下健 & オフェル・フェルドマン『政治家はなぜ質問に答えないか:インタビューの心理分析』(ミネルヴァ書房、2018年)。