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#KuToo

投稿者 岩島 史:2019年7月1日
夏が近づき、クールビズの季節です。クールビズは、それまで仕事場でのマナーとされていた男性のジャケット・ネクタイの着用を、暑い夏の間はやめることを推奨するもので、最近ではずいぶん定着してきました。
では、「#KuToo」を目にしたことはありますか?「#KuToo」とは仕事場で女性にのみハイヒールやパンプスを強要することに抗議するもので、「靴(くつ)」と「苦痛(くつう)」をかけてあります。セクハラなどの被害体験に「私も被害者!」と声をあげる「#MeToo」ムーブメントになぞらえたものです。「#KuToo」の署名活動は2019年1月ごろから日本で始まり、6月末時点で3万人近くの賛同者を集めています。この6月には、提出された「#KuToo」の署名に対して、厚生労働大臣が「社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲」であると答弁したことが海外メディアにも報じられ*1 、世界的にも話題になりました。
2015年には英国でも、企業の受付担当として派遣された女性が、ハイヒールを履かないことを理由に解雇されたことが大問題となり、2017年に英国議会での審議と調査が行われました。英国議会の調査報告書では、ハイヒールに加えて、髪をブロンドに染めること、化粧をすることが女性の服装規定として定められている企業が報告され、そのような服装の強制は女性差別的であり違法であることが確認されています。
なぜ、職場での服装の話が、こんなにも大きな話題になったのでしょうか。それは日本の厚労相が答えたように、まさに「社会通念」の問題であり、だからこそ性差別の問題でもあるからだといえます。ハイヒールがドレスコードとして求められる業種には接客業が多いようです。女性には他人(特に男性)から見て美しい外見であるべき、ということが社会通念上、男性よりも強く求められているといえ、それこそが性差別のひとつだからです。
「#KuToo」に対しては、男性も職場でネクタイとジャケット、革靴の着用が求められているといった反対の意見もよせられていますが、男性も革靴やネクタイが辛いと思えば声をあげようよ、というのも「#KuToo」には含まれるのではないでしょうか。「#KuToo」の署名活動を始めた女性は、パンプスやハイヒールを履いて一日中仕事をすることが、著しく健康を害し、不合理だということがきっかけで活動を始めましたが、のちに性被害と同じで、「嫌だと思ったことは口にしていい」と気づいたと語っています。「他の人も我慢しているのだから」「これぐらい我慢するのが当たり前」という理由で、嫌だと声をあげずに過ごすことは、男女問わず、日常のさまざまな場面であると思います。でも例えば「#MeToo」の広がりに見られるように、それまで声をあげられなかったり、声をあげるほどのことでもないと思っていた人たちから「私もそうだった」というたくさんの声がよせられることが、少しずつ制度や社会通念を変えていくことがあり得ます。
クールビズは、冷房の節約などを目標に掲げて環境省主導で行われたキャンペーンでしたが、職場の服装に関するマナーや「社会通念」を変化させるという前例となりました。何を着るのか履くのか、という身近なところから、日々の生活のなかの「あたりまえ」を批判的に考え、発言していくことが、生きやすい社会をつくる第一歩なのかもしれません。
*1たとえばThe Guardian 2019年6月3日、6月6日。The New Youk Times2019年6月4日など。
では、「#KuToo」を目にしたことはありますか?「#KuToo」とは仕事場で女性にのみハイヒールやパンプスを強要することに抗議するもので、「靴(くつ)」と「苦痛(くつう)」をかけてあります。セクハラなどの被害体験に「私も被害者!」と声をあげる「#MeToo」ムーブメントになぞらえたものです。「#KuToo」の署名活動は2019年1月ごろから日本で始まり、6月末時点で3万人近くの賛同者を集めています。この6月には、提出された「#KuToo」の署名に対して、厚生労働大臣が「社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲」であると答弁したことが海外メディアにも報じられ*1 、世界的にも話題になりました。
2015年には英国でも、企業の受付担当として派遣された女性が、ハイヒールを履かないことを理由に解雇されたことが大問題となり、2017年に英国議会での審議と調査が行われました。英国議会の調査報告書では、ハイヒールに加えて、髪をブロンドに染めること、化粧をすることが女性の服装規定として定められている企業が報告され、そのような服装の強制は女性差別的であり違法であることが確認されています。
なぜ、職場での服装の話が、こんなにも大きな話題になったのでしょうか。それは日本の厚労相が答えたように、まさに「社会通念」の問題であり、だからこそ性差別の問題でもあるからだといえます。ハイヒールがドレスコードとして求められる業種には接客業が多いようです。女性には他人(特に男性)から見て美しい外見であるべき、ということが社会通念上、男性よりも強く求められているといえ、それこそが性差別のひとつだからです。
「#KuToo」に対しては、男性も職場でネクタイとジャケット、革靴の着用が求められているといった反対の意見もよせられていますが、男性も革靴やネクタイが辛いと思えば声をあげようよ、というのも「#KuToo」には含まれるのではないでしょうか。「#KuToo」の署名活動を始めた女性は、パンプスやハイヒールを履いて一日中仕事をすることが、著しく健康を害し、不合理だということがきっかけで活動を始めましたが、のちに性被害と同じで、「嫌だと思ったことは口にしていい」と気づいたと語っています。「他の人も我慢しているのだから」「これぐらい我慢するのが当たり前」という理由で、嫌だと声をあげずに過ごすことは、男女問わず、日常のさまざまな場面であると思います。でも例えば「#MeToo」の広がりに見られるように、それまで声をあげられなかったり、声をあげるほどのことでもないと思っていた人たちから「私もそうだった」というたくさんの声がよせられることが、少しずつ制度や社会通念を変えていくことがあり得ます。
クールビズは、冷房の節約などを目標に掲げて環境省主導で行われたキャンペーンでしたが、職場の服装に関するマナーや「社会通念」を変化させるという前例となりました。何を着るのか履くのか、という身近なところから、日々の生活のなかの「あたりまえ」を批判的に考え、発言していくことが、生きやすい社会をつくる第一歩なのかもしれません。
*1たとえばThe Guardian 2019年6月3日、6月6日。The New Youk Times2019年6月4日など。