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日・EUの文化交流

投稿者 吉沢 晃:2018年6月1日
例年、5月から7月にかけ、全国各地で欧州連合(EU)の歴史やヨーロッパ諸国の文化に関するイベントが開催される。本稿では、これらのイベントの一部を紹介し、その背景を解説する。
近年、日・EU関係に関する報道と言うと、現在交渉中の戦略的パートナーシップ協定(SPA)や2017年12月に妥結された経済連携協定(EPA)など、政治経済に関する話題が取り上げられることが多い。だが、実は文化の領域でも、両者のあいだで様々な形の交流が行われている。そこで、ここではEUの政策に視点を置いて、2つの主な交流活動を紹介したい。
イベントの中には、欧州統合の歴史に関するパネル展示やクイズ、講演会やシンポジウムもあれば、ヨーロッパ映画の上映会などもある。個々の企画の主催者は主に、同志社大学など、EU情報センターを学内に設置している大学だ。2018年度は、北は北海道から南は沖縄まで、色々な地域の会場で30近くのイベントが開催される(*2)。これらのイベントは、日本人、特に高校生や大学生が、EUの歴史や文化について学ぶ機会を提供していると言えるだろう。
2018年度は、EUの28加盟国中、25か国の映画が上映される(*3)。会場は東京、京都、広島の3か所。なお、京都の会場は京都文化博物館で、開催期間は6月2日(土)から24日(日)まで。料金は一般が500円、大学生が400円と手ごろだ。EUのモットー「多様性の中の統一(Unity in Diversity)」を反映しているので、内容は異文化理解や多文化共生に関するものが比較的多く、使用言語も多様だ(もちろん、日本語字幕付きだが)。日本では初公開の、マイナーな映画も多く含まれている。洋画と言えばすなわちハリウッド映画、という一般的傾向が見られる今日の日本において、これだけ多くの国々の映画を手軽に見られるのは貴重な機会だろう。
また、EUは2016年6月に政策文書「国際文化関係のためのEU戦略に向けて(Towards an EU strategy for international cultural relations)」、通称EU文化戦略を発表し、域外国との外交関係における文化的側面の重要性を強調してきた。このような文脈を考えると、EUは今後も、本稿で紹介したような日本との文化交流事業を積極的、継続的に支援していく可能性が高いと言えるだろう。
(*1)駐日EU代表部「日・EUフレンドシップウィーク」https://eeas.europa.eu/delegations/japan/22285/%E6%97%A5%E3%83%BBeu-%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%AF_ja(閲覧日:2018年5月25日)。
(*2)駐日EU代表部「2018年 日・EU フレンドシップウィーク」https://eeas.europa.eu/sites/eeas/files/fw2018_list_web.pdf(閲覧日:2018年5月25日)。
(*3)ウェブサイト「EUフィルムデーズ2018」https://eufilmdays.jp/(閲覧日:2018年5月25日)。
近年、日・EU関係に関する報道と言うと、現在交渉中の戦略的パートナーシップ協定(SPA)や2017年12月に妥結された経済連携協定(EPA)など、政治経済に関する話題が取り上げられることが多い。だが、実は文化の領域でも、両者のあいだで様々な形の交流が行われている。そこで、ここではEUの政策に視点を置いて、2つの主な交流活動を紹介したい。
日・EUフレンドシップウィーク
1つ目は、2001年に始まった「日・EUフレンドシップウィーク(EU-Japan Friendship Week)」である。これは、駐日EU代表部とEU加盟諸国の大使館が支援をする、一連の日EU文化交流イベントのことを指す。当初は5月9日の「ヨーロッパ・デー」を起点とし、3週間程度の長さで実施されていたが、現在は5月から7月ごろにかけて催されている (*1)。ちなみに、ヨーロッパ・デーとは、戦後の欧州統合のきっかけとなったフランス元外相シューマン(Robert Schuman)による政治宣言、通称シューマン宣言(1950年5月9日)を記念した日のことである。イベントの中には、欧州統合の歴史に関するパネル展示やクイズ、講演会やシンポジウムもあれば、ヨーロッパ映画の上映会などもある。個々の企画の主催者は主に、同志社大学など、EU情報センターを学内に設置している大学だ。2018年度は、北は北海道から南は沖縄まで、色々な地域の会場で30近くのイベントが開催される(*2)。これらのイベントは、日本人、特に高校生や大学生が、EUの歴史や文化について学ぶ機会を提供していると言えるだろう。
EUフィルムデーズ
2つ目は、2003年から毎年開催されている、ヨーロッパ映画祭「EUフィルムデーズ(EU Film Days)」である。これは、形式的にはEUフレンドシップウィークの一部として位置づけられているが、ほぼ独立した別個のプログラムと捉えて差し支えないだろう。駐日EU代表部とEU加盟諸国の大使館・文化機関が、日本の関係機関と協力して催している。2018年度は、EUの28加盟国中、25か国の映画が上映される(*3)。会場は東京、京都、広島の3か所。なお、京都の会場は京都文化博物館で、開催期間は6月2日(土)から24日(日)まで。料金は一般が500円、大学生が400円と手ごろだ。EUのモットー「多様性の中の統一(Unity in Diversity)」を反映しているので、内容は異文化理解や多文化共生に関するものが比較的多く、使用言語も多様だ(もちろん、日本語字幕付きだが)。日本では初公開の、マイナーな映画も多く含まれている。洋画と言えばすなわちハリウッド映画、という一般的傾向が見られる今日の日本において、これだけ多くの国々の映画を手軽に見られるのは貴重な機会だろう。
EUの文化政策の一環として
これらのプログラムは、日・EU間の市民交流を促進する営みであると同時に、EUの文化政策と密接に関連した活動でもある。特にEUフィルムデーズは、まさにヨーロッパ諸国の文化の保護・育成そのものであり、EUの文化産業振興策「クリエイティブ・ヨーロッパ(Creative Europe)」(2014-2020)に即したものだ。この振興策はEUの様々な文化関連プログラムをパッケージ化したものであり、具体的活動としては例えば(1)映画やテレビ番組、音楽などの製作・配給会社による国際共同事業の促進や(2)芸術家の訓練の支援、そして(3)文学作品の翻訳に対する援助などがある。また、EUは2016年6月に政策文書「国際文化関係のためのEU戦略に向けて(Towards an EU strategy for international cultural relations)」、通称EU文化戦略を発表し、域外国との外交関係における文化的側面の重要性を強調してきた。このような文脈を考えると、EUは今後も、本稿で紹介したような日本との文化交流事業を積極的、継続的に支援していく可能性が高いと言えるだろう。
(*1)駐日EU代表部「日・EUフレンドシップウィーク」https://eeas.europa.eu/delegations/japan/22285/%E6%97%A5%E3%83%BBeu-%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%AF_ja(閲覧日:2018年5月25日)。
(*2)駐日EU代表部「2018年 日・EU フレンドシップウィーク」https://eeas.europa.eu/sites/eeas/files/fw2018_list_web.pdf(閲覧日:2018年5月25日)。
(*3)ウェブサイト「EUフィルムデーズ2018」https://eufilmdays.jp/(閲覧日:2018年5月25日)。