同志社大学 政策学部

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フェアトレード

投稿者 岡本 由美子:2018年5月1日

投稿者 岡本 由美子:2018年5月1日
 私のゼミは毎年夏、途上国に海外フィールドワークに出かけます。2017年度の夏からミャンマーからウガンダにフィールドを変更しました。ウガンダと言えば、皆さん、何を想像されるでしょうか。
 ウガンダは、「アフリカの真珠」と呼ばれるくらい自然が豊かで、マジソン国立公園を始めとして、観光資源が豊かです。しかし、日本では意外と知られていないのが、ウガンダコーヒーです。無理もありません。ウガンダのコーヒーの生産量のおよそ75から80パーセントはロブスタ種であり、インスタント用コーヒーとしてよく使用されるからです。
 一方、量はそれほど多くはないものの、ウガンダのエルゴン山の麓で栽培されているコーヒーはアラビカ種で高品質なものが多く、最近はスペシャルティコーヒーとして世界の市場に出回るようになりました。近年、スターバックス社が、魅力的で個性的なストーリーを持った、希少なコーヒー豆「スターバックス リザーブ」を販売するようになりましたが、その中に、この地域のウガンダ産のコーヒーも含まれています。100グラム1200円ぐらいと大変、高値で販売されています。
 しかし、今、私が最も注目をしているウガンダ産コーヒーは、小規模ながら組合を結成し、先進国の有機栽培やフェアトレード認証を取得し、自らの力で世界に輸出し始めたブフンボ有機コーヒー小規模生産農家組合(BOHA)のものです。1997年7人で組合を結成し、有機コーヒー栽培技術を習得し、多国籍企業には頼らず各種認証を取得することで、世界市場を自ら開拓することに成功をした組合です。現在は、538名の認証農家を擁するまでに大きくなりました。コーヒーの認証制度の中でも基準が最も厳しいとされるフェアトレード認証の取得は組合員数の拡大、及び、組合による輸出市場の開拓に大きく貢献しました。
 実は私のゼミは、2017年度9月にウガンダのこのコーヒー農園を実際に訪問し、組合の幹部役員や農家の方々から実際にお話を伺うまでは、フェアトレード認証制度の貧困削減効果に少々懐疑的でありました。これまで多くの研究がなされていますが、結果がまちまちであり、今一つ、確証を得られなかったからです。しかし、自ら認証を得て、自ら海外で市場を開拓できるようになった結果、"We no longer need to beg money, we can stand on our own, we can dictate our lives"、という状況に現在ある、ということを彼らの口から直接伺った時は、衝撃的でありました。フェアトレードは、世界で最も貧しいと言われるコーヒー小規模生産農家が自らの力で自らの状況を変える事ができる、数少ない取引形態の一つとなりうることがわかりました。
 残念ながら、欧米に比べると日本ではフェアトレード商品はそれほど普及していません。皆さん、政策学部でフェアトレードの可能性と課題について一緒に勉強してみませんか。