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働き方改革

投稿者 川口 章:2018年3月1日
最近、新聞、テレビ、インターネットなどで「働き方改革」という言葉をよく目にします。「働き方改革」とは、安倍内閣の経済政策のひとつです。安倍内閣は、「三本の矢」「女性活躍」「一億総活躍」「プレミアムフライデー」など、次々と新語を作り出して政策のキャンペーンをしていますが、その多くはあまり広がることなく忘れ去られています。その中にあって、「働き方改革」は現在注目度上昇中の言葉です。
注目度がどれくらい上昇しているかを「朝日新聞」の記事の数で見てみましょう。2015年の1年間に「働き方改革」という言葉が載っていた記事の数は25件でした。それが、2016年には238件、2017年には796件に増えています。現在は毎日2件ほどのペースで「働き方改革」について記事が書かれていることになります。この言葉が頻繁に使われるということは、それだけ国民が現在の働き方を変えたいと思っていることの現れでしょう。
働き方改革は、日本人の働き方全般にかかわる広範な政策ですが、主に四つの分野に分けることができます。第1は、時間あたり賃金(以下、単に「賃金」と書きます)における不平等の解消です。日本では、正社員と非正社員(パートや派遣社員など)で、賃金に格差があります。同じ会社で同じ仕事をして同じ成果をあげても、正社員と非正社員では賃金が違うのが一般的です。それは、正社員と非正社員では賃金の決まり方が違うからです。正社員の場合、現在の仕事内容のほか、勤務先での勤続年数やこれまでに経験した仕事内容も賃金決定の重要な要因です。それに対し、非正社員の賃金は現在の仕事内容だけで決まることが多いのです。また、正社員にはボーナスや通勤手当、家族手当などの手当がありますが、非正社員にはないことが多いです。政府は、賃金の決め方を、正社員と非正社員で区別せず、同じ基準で決めるように誘導するプランを発表しています。
第2は、効率の改善です。日本は、世界の先進国の中で、仕事の効率がもっとも悪い国の一つです。効率が悪いということは、一定時間の労働で、少しの商品やサービスしか生産できないということです。その最大の原因は、長時間労働にあります。労働時間が長くなる背景には、無駄な仕事(会議や書類作成)が多い、だらだら仕事をする、顧客から過剰なサービスが要求される、などがあります。たとえば、宅配時間を朝から夜まで3時間単位で指定し、留守宅には無料で何度でも再配達を行うなどは、海外では考えられないサービスです。また、「おもてなし」の文化は日本の美徳とされていますが、働く人たちにとっては、過労やストレスの原因となることもあります。仕事の効率を上げるには、一人ひとりの仕事の範囲をはっきりさせ、早く仕事ができる人を高く評価するような人事評価制度を導入することと、働く人たちに対して顧客がもっと寛容になることが必要です。
第3は、ワーク・ライフ・バランスの改善です。ワーク・ライフ・バランスとは、仕事と生活(家事、育児、趣味、勉強など)の両立のことです。ワーク・ライフ・バランスが良くなれば、健康で充実した生活が送れます。仕事の効率改善にもつながります。逆に、ワーク・ライフ・バランスが悪いと、病気になったり、育児のために仕事を辞めざるをえなくなったりします。ワーク・ライフ・バランス改善のためには、労働時間の短縮や家庭生活の必要に応じた柔軟な働き方の実現が必要です。今、労働時間短縮をめざす法案が国会で審議されています。現在の制度では、残業代を払えば事実上無制限に労働時間を延長することが可能であるのに対し、残業時間に上限を設けようという法改正案です。
第4は、労働力不足の解消です。日本では、産まれる子どもの数が年々減っています。1970年代半ばには年間約200万人の子供が生まれていましたが、その後毎年減少し、2016年には100万人を割ってしまいました。そのため、労働力足が深刻になっています。労働力の不足は、企業の競争力の低下、国の経済成長率の低下、国民の所得の低下につながります。また、働き盛りの人口が減る一方で、高齢者が増えています。現在の社会福祉制度では、働けない高齢者の生活を、若い世代が納めた税金や社会保険料で支えることになっています。そのため、若い世代の所得の多くが、高齢者の生活費に使われるという、世代間の不平等が発生しています。労働力不足の解消には、女性労働力の活用、高齢労働力の活用、外国人労働力の活用、生産性の向上などが必要です。
以上四つの分野の問題はいずれも長い時間をかけて形成された文化や労働慣行に基づくもので、一朝一夕には変わるものではありません。とはいえ、一刻も早く改革をしなければ、日本は世界の経済成長から取り残される恐れがあります。「働き方改革」は、現状では安倍内閣の政策プランにすぎず、実現しているのはごく一部です。働きやすい社会を創るためには、政策プランの速やかな実現と更なる改革プランの作成を、政府に要求していかなければなりません。
注目度がどれくらい上昇しているかを「朝日新聞」の記事の数で見てみましょう。2015年の1年間に「働き方改革」という言葉が載っていた記事の数は25件でした。それが、2016年には238件、2017年には796件に増えています。現在は毎日2件ほどのペースで「働き方改革」について記事が書かれていることになります。この言葉が頻繁に使われるということは、それだけ国民が現在の働き方を変えたいと思っていることの現れでしょう。
働き方改革は、日本人の働き方全般にかかわる広範な政策ですが、主に四つの分野に分けることができます。第1は、時間あたり賃金(以下、単に「賃金」と書きます)における不平等の解消です。日本では、正社員と非正社員(パートや派遣社員など)で、賃金に格差があります。同じ会社で同じ仕事をして同じ成果をあげても、正社員と非正社員では賃金が違うのが一般的です。それは、正社員と非正社員では賃金の決まり方が違うからです。正社員の場合、現在の仕事内容のほか、勤務先での勤続年数やこれまでに経験した仕事内容も賃金決定の重要な要因です。それに対し、非正社員の賃金は現在の仕事内容だけで決まることが多いのです。また、正社員にはボーナスや通勤手当、家族手当などの手当がありますが、非正社員にはないことが多いです。政府は、賃金の決め方を、正社員と非正社員で区別せず、同じ基準で決めるように誘導するプランを発表しています。
第2は、効率の改善です。日本は、世界の先進国の中で、仕事の効率がもっとも悪い国の一つです。効率が悪いということは、一定時間の労働で、少しの商品やサービスしか生産できないということです。その最大の原因は、長時間労働にあります。労働時間が長くなる背景には、無駄な仕事(会議や書類作成)が多い、だらだら仕事をする、顧客から過剰なサービスが要求される、などがあります。たとえば、宅配時間を朝から夜まで3時間単位で指定し、留守宅には無料で何度でも再配達を行うなどは、海外では考えられないサービスです。また、「おもてなし」の文化は日本の美徳とされていますが、働く人たちにとっては、過労やストレスの原因となることもあります。仕事の効率を上げるには、一人ひとりの仕事の範囲をはっきりさせ、早く仕事ができる人を高く評価するような人事評価制度を導入することと、働く人たちに対して顧客がもっと寛容になることが必要です。
第3は、ワーク・ライフ・バランスの改善です。ワーク・ライフ・バランスとは、仕事と生活(家事、育児、趣味、勉強など)の両立のことです。ワーク・ライフ・バランスが良くなれば、健康で充実した生活が送れます。仕事の効率改善にもつながります。逆に、ワーク・ライフ・バランスが悪いと、病気になったり、育児のために仕事を辞めざるをえなくなったりします。ワーク・ライフ・バランス改善のためには、労働時間の短縮や家庭生活の必要に応じた柔軟な働き方の実現が必要です。今、労働時間短縮をめざす法案が国会で審議されています。現在の制度では、残業代を払えば事実上無制限に労働時間を延長することが可能であるのに対し、残業時間に上限を設けようという法改正案です。
第4は、労働力不足の解消です。日本では、産まれる子どもの数が年々減っています。1970年代半ばには年間約200万人の子供が生まれていましたが、その後毎年減少し、2016年には100万人を割ってしまいました。そのため、労働力足が深刻になっています。労働力の不足は、企業の競争力の低下、国の経済成長率の低下、国民の所得の低下につながります。また、働き盛りの人口が減る一方で、高齢者が増えています。現在の社会福祉制度では、働けない高齢者の生活を、若い世代が納めた税金や社会保険料で支えることになっています。そのため、若い世代の所得の多くが、高齢者の生活費に使われるという、世代間の不平等が発生しています。労働力不足の解消には、女性労働力の活用、高齢労働力の活用、外国人労働力の活用、生産性の向上などが必要です。
以上四つの分野の問題はいずれも長い時間をかけて形成された文化や労働慣行に基づくもので、一朝一夕には変わるものではありません。とはいえ、一刻も早く改革をしなければ、日本は世界の経済成長から取り残される恐れがあります。「働き方改革」は、現状では安倍内閣の政策プランにすぎず、実現しているのはごく一部です。働きやすい社会を創るためには、政策プランの速やかな実現と更なる改革プランの作成を、政府に要求していかなければなりません。