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教員紹介

川上 敏和 教授

かわかみ としかず

川上 敏和 教授

研究分野(学部) ゲーム理論の応用、人や主体間の協力行動
研究テーマ(大学院) ゲーム理論の応用、環境問題、気候変動問題
研究室 渓水館218号室

研究の関心(研究内容を含む)

 我々の社会においては、自分の行動が相手に影響を及ぼし、また逆に相手の行動も自分に影響を及ぼしあうという相互依存関係を至る所に見つけることができます。そのような状況を戦略的状況と言います。戦略的状況下の人や経済主体などがどのように行動するかを予測する理論がゲーム理論です。ゲーム理論では様々なテーマが研究されていますが、私が研究しているのは、人と人や経済主体間の協力行動の分析です。最近では、都市部のような匿名的な社会において、人間関係が流動的に変化していくような協力が実現しにくい状況下においても、規範や慣習を手掛かりとして、人々が協力行動をとることを示すという研究を行っています。また、経済学やゲーム理論のモデルでは、人々は同じ選好を持つという仮定を置くのですが、直近の研究では、人々が多様な選好を持つ状況を考察しています。実は多様な選好を持つ人々の協調は難しいのですが、それが実現するポジティブな結果が導かれることが示せています。

 また近年、環境問題や気候変動問題にも関心を持っています。世界全体的な気候変動対策が実現するかどうかについては、ゲーム理論の協力行動の分析を応用することによって考えることができます。気候変動対策は各国が協力して行う必要がありますが、個々の国は他の国が実施してくれる対策にただ乗りするインセンティブを持ちます。これをフリーライダー問題と呼びます。このフリーライダー問題をどのように回避するかについては、ゲーム理論による分析により、解決策が導けるのではないかと考えています。

プロフィール

同志社大学経済学部を卒業後、筑波大学社会工学研究科に進学し、ゲーム理論とゲーム理論の応用分野として産業組織論などを研究した。特に、大学院時代は企業間の協調について論文を書いた。その当時執筆した主な論文は以下の通りのである。

Furusawa, T. and Kawakami, T (2008)“Gradual Cooperation in the Existence of Outside Options,” Journal of Economic Behavior and Organization Vol. 68, pp. 378-389. Kawakami, T. (2010) “Collusion and Predation under the Condition of Stochastic Bankruptcy,” The Japanese Economic Review Vol. 61, pp. 408-426.

卒業後は福島大学経済学部に就職し、7年間勤めた後、2004年同志社大学政策学部の開設に伴い母校で教鞭をとることになった。転勤後、学部の性格に合わせ、学際的な分野に研究のフィールドを移し、社会において、規範や慣習の力を借りながら、協力が実現することを説明する研究を進めている。近年執筆を進めている論文は以下の通りである。

Toshikazu Kawakami (2020)"Norm Equilibria in Random Matching Games with Imperfect Public Monitoring: A Study of Numerical Examples." ITEC Working Paper Series20-03.

講義・演習・少人数クラスについて

【学部科目】

 主な担当講義は、経済学入門、入門ミクロ経済学です。政策学部の経済学科目ですので、必要最低限の内容を勉強し、それをなるべく広い具体例に適用することにより経済の見方を習得してもらうスタイルを取っています。また、ゼミや外書購読では、近年の関心の高まりに合わせて、環境や気候変動をテーマにしています。その他に、ゼミではExcelを使って統計学を勉強しています。近年、エビデンスベースドポリシーが謳われていますが、そのためにデータを見る力を養うことは重要と考えます。また、大島先生と合同ゼミを実施しています。法律と経済学の学際的考察がこの合同ゼミの目標です。

【大学院科目】

 主な担当講義は、政策分析研究です。今年から、システム分析をテーマにしています。システム分析の基本的な考え方を学びながら、内容についてExcelを用いたシュミレーションで確認するというスタイルを取っています。

受験生へのメッセージ(学部・大学院)

近年、社会の専門分化が進み、自分の専門分野には詳しいけれども、分野外のことについては余り明るくないといったタイプの人が増えています。一方で、複数の分野をまたいでそれらを繋いだりコーディネートしたりという能力を持つ人材は不足しています。けれども社会が高度化すればするほど、後者のような人材は重要性を増すでしょう。私は政策学部ではそのような人材の育成を担うべきだと考えていて、微力ながらそのような人材になるための講義や授業を実施しています。

私のような立場からすると、政策学部や総合政策科学研究科で勉強や研究を志される諸君には、ぜひ様々な事柄に関心を持ち、幅広い知識を習得してきて欲しいと思います。政策学は学際的な研究分野です。グローバルで高度に発達した社会の問題解決のためには、多様な視点が必要です。それら多様な視点を支えるのが、様々な学問領域の多彩な分析手法、研究手法です。そこに文系や理系といった垣根はありません。政策学部、政策科学研究科での学びは、分野と分野を繋ぎファシリテイトする力を持った人材に皆さんを成長させてくれる筈です。そのために高校時代にできる準備をしっかりして欲しいと思います。