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教員紹介

井口 貢 教授

いぐち みつぐ

井口 貢 教授

研究分野(学部) 文化・観光政策の要諦としての人文知の所在
研究テーマ(大学院) 人文知を大切にして考える文化政策と観光政策の所在-公共政策とパブリック・フォークロア、あるいは柳田国男の政策思想と宮本常一のソーシャル・イノベーション
研究室 渓水館223号室
メールアドレス miguchi@mail.doshisha.ac.jp

プロフィール

1956年2月滋賀県米原市(旧:米原町)生まれの水瓶座。

現在本学部と研究科では、「文化政策」と「観光政策」をベースとした講義とゼミを担当しています。僕が何故こういう領域に関心を持つようになったのかということをお話ししたいと思います。一言でいえば「三つ子の魂百まで」に尽きるかと思います。僕は凡人なので「栴檀は双葉より芳し」では決してないのですが、「三つ子の魂」を心のなかで大切にしてきたからということになるのではないでしょうか。「自分史」を回想しつつ、エポックメイキングな「自省誌」を何点か記しましょう。

  • ①小学校4年生の時の担任のT先生からもらった一言。
  • ②中学校3年生の時の国語(A先生)と音楽の先生(K先生)との出会い。
  • ③高校生の時に出会った英語(T先生)と倫理社会(N先生)の先生の影響。
  • ④学生時代の教養課程・英語担当のY先生(シェイクスピアの研究者)と経済学者Y先生(「マルクス経済学原論」

 を担当、のちに「レギュラシオン理論」研究の泰斗に)から知己を得るかのごとく接していただいたこと。
直截的には、何ら今僕が担当していることと関係なさそうですがそれが自己のなかで深く通底しています。

研究の関心(研究内容を含む)

 プロフィールに示しました内容を参照しながら読んでください。①での担任のT先生の一言「本当に1+1は2なのだろうか?」、これに惹かれた僕は絶えず、世の中の正解はひとつでないと感じ始めました。すなわち、ステレオタイプで思考しないということでこれを大前提としながら「文化政策」と「観光政策」について考えてきました。大学教員となって久しくなりました。教員となったばかりの頃は、管見によればですが、わが国の大学教育の世界にはカリキュラム上「観光政策」も「文化政策」も皆無かそれに近かったと思います。「文化経済学会〈日本〉」という学会組織が誕生したのは1990年代の半ば以降、おそらくわが国最初の「観光学部」が立教大学に誕生したのが1990年代の末期です。そして2003年の小泉内閣による「観光立国宣言」、ここでいっきに大学教育の世界でも「観光」や「文化」にも注目が集まるようになりました。そしてその後、国交省の外局として観光庁が生まれます。こうした流れのなかで、「観光は経済政策である」「文化は経済政策である」というステレオタイプのような捉え方も跋扈していくことに、言い知れぬ違和感を覚え一貫してその違和感への問いをいくつかの拙著や講義のなかで示してきたつもりで、以降もその思いを変えずに進めています。そう考えるに至った原点は②にあったと思います。そして単純に「一般教養」と訳してはいけない「リベラル・アーツ」の大切さも、無意識のうちにもそこで学んだ気がします。「リベラル・アーツ」とは「自由な発想で学び、思考する技能」だと思います。少なくとも「観光」と「文化」の政策の底流は「リベラル・アーツ」だと思いその学びを進めてきたつもりであるし、それをさらに追い求めたいと思います。②で僕が、中学3年生の時にその名を知った柳田國男(1875~1962)。文人の文体で書かれた彼の政策科学の処女作は「遊海島記」(1902)であり、学生たちと共に愛読し続けています。

講義・演習・少人数クラスについて

【学部科目】

 地域社会という視点から、文化や観光を見詰めることを通して、日本をそして世界を俯瞰することができればよいのではないかという想いのなか、どの科目においてもそうした視点から考えています。

【大学院科目】

 総合政策科学という視点から、学んでいく必要性を鑑みたとき、とりわけ「文化」と「観光」をテーマとする以上、上記してきたような視点、すなわちリベラル・アーツ、人文知への顧慮を忘れることなく考えていきます。

受験生へのメッセージ(学部・大学院)

わが国の近代において、多様な分野にわたる政策学の泰斗といっても良い柳田國男((1875~1962)は、その著『日本の祭』(1942)のなかで「史心というものだけは、いかなる専門に進むものにも備わっていなければならぬ」という言葉を残しています。「史心」は読書で年輪を重ねる以外恐らく自己のなかで醸成することは難しいでしょう。それなき、フィールドワークも社会実験も、あるいはまちづくりのための実践も、あるいは文書を書くことも、空虚であるということをしっかりと肝に銘じ念じておいてください。また「史心」は、地域社会が有する多様性を僕たちに教えてくれるはずです。さらには、「一国」のといっても良いでしょう。「成功事例」や「流行」といわれるものを、牽強付会に換骨奪胎化することは、おおよそ人文知からはかけ離れたものとなるということを併せ銘記しながら、合格・入学後の視野にそのことを入れておいていただくのも一興でしょう。

その際に忘れて欲しくないことは、地域・まち・そして他者に対する共感の念という人文知です。そして人文知の要諦は、「しごころ(史心・誌心・詩心)」の鼎立に他なりません。

同志社大学での4年間、人生の貴重なひとときを大切に過ごしてください。