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選挙における男女平等

投稿者 川口 章:2019年4月1日
選挙は性別にかかわらず、一人一票を投じますので、男女平等な制度のように見えます。しかし、選挙に立候補する立場からすれば、とても平等とは言えません。2019年は、4年に1度行われる統一地方選挙の年です。多くの地方自治体で首長(知事、市町村長、区長)や議員の選挙が行われます。2015年(前回)の統一地方選挙における男女別立候補者数を見ますと、立候補者全体のうち女性はわずか13.7%で、86.3%が男性でした。これを首長選挙と議員選挙に分けてみますと、首長選挙では、女性立候補者が5.3%、男性立候補者が94.6%であるのに対し、議員選挙は女性が13.2%、男性が86.7%です。首長選挙の立候補者の方がより男性に極端に偏っていることがわかります。当然のことながら、当選者も男性が圧倒的に多くなります。女性は首長の1.7%、地方議会議員の12.8%にすぎません。
なぜ、女性の立候補者が少ないのでしょうか。選挙は、地盤、看板、鞄の「三バン」がなければ勝てないと言われています。「地盤」とは選挙区内の支持者の組織(後援会)のことです。後援会は、市民団体、労働組合、業界、宗教団体など既存の組織を軸として組織化されたり、地縁、血縁、同窓生など個人的ネットワークを軸に組織されます。既存の組織にしろ、個人的ネットワークにしろ、日本では男性がトップになることが多いので、選挙に立候補するにも男性優位となります。
次に「看板」とは知名度です。誰もが知っている芸能人、スポーツ選手、知識人、世襲候補などは選挙で有利です。これは男女であまり差がないかもしれません。ただ、世襲候補に男性が多いことは、近年の首相をみても明らかです。
最後に「鞄」とは、札束が入った鞄、つまり選挙資金です。選挙にはお金がかかります。立候補するためには供託金を納めなければならず、事務所経費や後援会活動費も必要です。所得や資産などの経済力でも男性が優位であるのがわが国の現状です。
この他、女性の政治活動を妨げているものに、性別役割分業と偏見があります。性別役割分業とは、「女性は家庭で家事・育児を担うべき、男性は外でお金を稼ぐべき」という社会規範です。実際に、日本では家事・育児の8割以上は女性が行っており、政治活動に割く時間が限られています。さらに、「女性は政治には向かない」、「女はでしゃばるな」という偏見があります。特に、地方に行くほどこのような偏見は強く残っています。
女性も男性と同じく投票しているのだから、女性が選ばれようが男性が選ばれようがと関係ないという考える人もいるでしょう。しかし、男性には見えにくい社会問題や女性の方がより共感をもって取り組める社会問題もたくさんあります。例えば、母子家庭の貧困、高齢女性の貧困、家庭内暴力、セクシュアル・ハラスメント、マタニティー・ハラスメント、性犯罪などの問題です。女性の政治家が少ない日本では、他の先進国と比べてこれらの問題への取り組みが遅れているのが現状です。母子家庭の貧困率は非常に高く、性犯罪者への罰は緩やかです。
このような現状を改善しようとして、2018年5月に制定されたのが「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」です。略して「候補者男女均等法」とも呼ばれます。これは、政党に対して、男女の候補者数の差を縮めるよう努力することを求める法律です。海外では、男女の候補者数を等しくすることを求める国もたくさんありますが、日本の法律は、女性候補者数を男性候補者数に近づけるよう自主的に取り組むことを要求しているにすぎません。
2019年の統一地方選挙と参議院選挙は、法律が施行されて初めての大型地方選挙および国政選挙です。法律の効果がどれほどあるのか、各政党がどれほど法律の精神を尊重するのか大いに注目したいところです。
なぜ、女性の立候補者が少ないのでしょうか。選挙は、地盤、看板、鞄の「三バン」がなければ勝てないと言われています。「地盤」とは選挙区内の支持者の組織(後援会)のことです。後援会は、市民団体、労働組合、業界、宗教団体など既存の組織を軸として組織化されたり、地縁、血縁、同窓生など個人的ネットワークを軸に組織されます。既存の組織にしろ、個人的ネットワークにしろ、日本では男性がトップになることが多いので、選挙に立候補するにも男性優位となります。
次に「看板」とは知名度です。誰もが知っている芸能人、スポーツ選手、知識人、世襲候補などは選挙で有利です。これは男女であまり差がないかもしれません。ただ、世襲候補に男性が多いことは、近年の首相をみても明らかです。
最後に「鞄」とは、札束が入った鞄、つまり選挙資金です。選挙にはお金がかかります。立候補するためには供託金を納めなければならず、事務所経費や後援会活動費も必要です。所得や資産などの経済力でも男性が優位であるのがわが国の現状です。
この他、女性の政治活動を妨げているものに、性別役割分業と偏見があります。性別役割分業とは、「女性は家庭で家事・育児を担うべき、男性は外でお金を稼ぐべき」という社会規範です。実際に、日本では家事・育児の8割以上は女性が行っており、政治活動に割く時間が限られています。さらに、「女性は政治には向かない」、「女はでしゃばるな」という偏見があります。特に、地方に行くほどこのような偏見は強く残っています。
女性も男性と同じく投票しているのだから、女性が選ばれようが男性が選ばれようがと関係ないという考える人もいるでしょう。しかし、男性には見えにくい社会問題や女性の方がより共感をもって取り組める社会問題もたくさんあります。例えば、母子家庭の貧困、高齢女性の貧困、家庭内暴力、セクシュアル・ハラスメント、マタニティー・ハラスメント、性犯罪などの問題です。女性の政治家が少ない日本では、他の先進国と比べてこれらの問題への取り組みが遅れているのが現状です。母子家庭の貧困率は非常に高く、性犯罪者への罰は緩やかです。
このような現状を改善しようとして、2018年5月に制定されたのが「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」です。略して「候補者男女均等法」とも呼ばれます。これは、政党に対して、男女の候補者数の差を縮めるよう努力することを求める法律です。海外では、男女の候補者数を等しくすることを求める国もたくさんありますが、日本の法律は、女性候補者数を男性候補者数に近づけるよう自主的に取り組むことを要求しているにすぎません。
2019年の統一地方選挙と参議院選挙は、法律が施行されて初めての大型地方選挙および国政選挙です。法律の効果がどれほどあるのか、各政党がどれほど法律の精神を尊重するのか大いに注目したいところです。