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政策学会講演会(レポート)
『伝統産業を子どもにつなぐ~28歳女性起業家の挑戦』

テーマ『伝統産業を子どもにつなぐ~28歳女性起業家の挑戦』
講師矢島 里佳 氏
日時2017年6月27日(火)16:40~18:10
会場同志社大学新町キャンパス 尋真館(Z40)

今年で6年目を迎える株式会社「和える」(aeru)は、当時22歳であった代表の矢島里佳さんが、慶應義塾大学4年時に設立した会社です。

「21世紀の子どもたちに、日本の伝統をつなぎたい」との想いから、日本全国の職人と共につくる0から6歳の伝統ブランドとして立ち上げ、今や日本を代表する社会的企業のひとつとして大きな注目を集めています。そして今や若者に対する“新しい働き方や生き方”の提案を行うまでに成長しています。

株式会社和えるの主力商品は、0〜6歳児を対象とした日用品です。赤ちゃんから幼児が日常的に使用するお皿やコップの伝統ブランドをつくり、小さい頃から手間暇かけて作られた本物に触れる機会を提供しています。

矢島さんのお話の中でも、特に印象に残ったのが「消費者から暮らし手へ」という言葉です。大量生産・大量消費の世界の中で、職人が手間暇かけてじっくり創りあげる伝統産業品は、多くが喪失の危機を迎えています。

しかし、そうした「とにかく安くて便利なものを」と追い求める消費者のニーズと、それに応えようとする企業の生産・販売のありかたが、常に弱いところにしわ寄せをつくる非人間的な社会をつくってしまったのではないか、と矢島さんは考えます。

そんな中、和えるでは本物の職人がつくった本物の商品を、子どもたちに届けることを通して、そうした本物の価値を理解できる感性を社会全体に育もうとしています。「消して、費やす」消費者ではなく、暮らしの主体者である「暮らし手」への展開を、ビジネスを通して社会に実現していこうとする矢島さんの大きな志とチャレンジに、参加者は大きな感銘を受けていました。

また、矢島さんは法人もひとつの生命体であると考え、社員一同で会社を“和えるくん”と呼び、それぞれが和えるくんのお母さんやお姉さん、お兄さんという気持ちで、「いま和えるくんはどんな存在になっていこうとしているのか」「和えるくんだったらどう考えるのか」といったことを常に考えながら事業をデザインしていっているのだそうです。

そうすることで、目先の利益に惑わされず、常に100年先、1000年先を見据えた会社経営が可能になっている、とのことばに、参加した同志社大学政策学部の学生たちは「NPO以上にNPOらしい!」「利益を最優先しない企業があることを初めて知った」といった感想を寄せてくれました。

矢島さんは講演の中で「これまでの5年間でやっと会社の基礎が理解できました。これからが本当にやりたいことができるのではと考えています」と語っていました。これから就活を迎える多くの政策学部の学生達には「生き方と働き方」を考えるきっかけになったのではないでしょうか。

学生達からの質問には「なぜ安定しない起業の道を選んだのか」というものが多く、安定志向の学生達に矢島さんの起業物語はとても良い刺激となったようでした。

矢島さんたちが始めている、こうしたソーシャルビジネスのありかたは、ひと昔前であれば「きれいごと」「理想論」で片付けられていたものです。しかし既存の社会のありかたに矛盾を感じつつも、ただ単にそれを批判するのではなく、代替案をしなやかに社会に提案しながら、自らの仕事を創造的に創り上げている矢島さんたちの姿に、学生たちは大きな刺激を受けていました。

こうした「時代の変化の先っぽ」を生きる素敵な大人に出会うことを通して、ぜひ学生のみなさんには自分たちの人生を創造的に切り開いていってほしいな、と思います。

(政策学部准教授 佐野 淳也)

政策学会講演会

佐野 淳也