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官民ファンドの行方

根岸 祥子 投稿者 根岸 祥子 : 2019年1月1日

昨年末のことですが、産業革新投資機構(JIC)という名前が新聞やニュースを賑わせていました。JICは、次世代の産業育成を担う官民ファンド(日本政府と民間が共同出資する政府系ファンド)で、2009年に設立された産業革新機構を前身としています。当初から、先端技術やイノベーションを担う新規事業の立ち上げや既存事業の再編のために積極的に資金を提供し、日本経済の競争力を維持・向上させることを目的として掲げていました。組織の基盤となる法律の施行には経済産業省が中心的役割を担っており、2018年9月に組織改編されてからは、民間出身の経営幹部を中心に新体制で運営されてきました。

とはいえ、多くの人にとってはあまり馴染みのない話題だったのですが、12月に入ってからJICをめぐるさまざまなネガティヴ報道が出たことから注目を集めるようになりました。その多くは「高額過ぎる役員報酬について経産省とJIC社長が対立」といった内容のもので、ついには民間出身の取締役9名が辞任を表明、実質的に休止状態となりました。

メディアで大きく取り上げられることがなかったのですが、両者の対立の背景にあるのは、「国の関与の認否」という論点です。経産省は、国が100パーセント近い株式を保有することから、投資先の決定や運用方法などについて「国の意向をしっかりと反映させたい」と主張していました。これに対しJIC側は、ファンド出資者の受益を考慮し「中長期的な投資リターンの最大化」を実現するために、投資の自由度を最大限確保したいとの立場をとってきました。

この議論の根っこは、官民ファンドのあり方についての明確なコンセンサスが共有されないまま始動してしまったことにあるようです。中国や中東諸国の政府系ファンドのように、国が出資する以上、投資先や手法に国策が反映されるのはしばしば見られることです。一方で、民間も出資するファンドとしては、投資効率を最大限実現させるという役割も無視できません。その間のどこで線を引くかは、ファンドの設立意義や出資比率も考慮しながら、事前にしっかりと議論されるべきではないでしょうか。日本の産業の活性化と競争力の向上を掲げてスタートを切ったばかりの官民ファンド、このような形で頓挫する結果となったことが残念でなりません。