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政策最新キーワード

社会インパクトとエコシステム

服部 篤子 投稿者 服部 篤子 : 2018年8月1日

 社会を変える、世界を変える、未来を創る、そのような標語を多く見聞きします。社会問題を解決したい、という「思い」をもって取り組む人々は、市民団体や企業、行政などに幅広く見受けられます。近年、ここに「社会インパクト」というキーワードが加わりました。
 インパクトとは何でしょうか。普段は、人、製品、事業、地域、経済など何かへの影響、影響力として用いるでしょう。市民社会やソーシャルイノベーションの研究領域では、「何らかのプログラムやプロジェクトを実施した結果、参加者やコミュニティ、あるいは、おかれた環境に生じる"変化"」を意味します。Elizabeth Bibb, et al (2004), The Blended Value Glossary

 問題は、「変化の期間を特定することが容易ではないことです」。超高齢社会のコミュニティ、地方の人口減少、自然環境と災害、青少年の育成、家族のあり方、様々な取り組みは長期にわたります。よって変化は継続して生じますが、地道な継続的な活動はその変化が見えにくいことも確かです。この変化をどのようにとらえることができるのか、つまり、「社会インパクトをどのように測るのか」が注目されています。

 このようなインパクトを定量的に示す、という考えは米国から広まりました。ビル・ゲイツ氏に代表されるように、起業して成功した後、財団等を設立して社会貢献活動をする経営者が多くいます。ベンチャー・フィランソロピーと呼ばれています。ベンチャーの成功者は、自らの投じた資金がいかに問題解決につながったのか、社会の何が変わったのかを明らかにすることを求めました。その結果、評価手法の開発が盛んとなったのです。現在、その手法は数百にのぼり、日本でも試行されていますが定着したものはありません。手法よりもむしろ、社会インパクトをどのように定性的、定量的に伝えていくのか、そのことによって、その社会問題に関心を示さなかった層への理解を高め、意識や行動変容を促すことができるのかが重要な論点といえます。

 他方、社会インパクトは、自らのプロジェクトや事業に加えて、その事業を行っている地域や社会の文化、歴史、自然環境によって相違が出ます。このような事業を取り巻く外的な環境の実態を「エコシステム」といいます。もともとは、生物の世界で用いられてきたキーワードであり、生物とその自然環境をとらえる生態系を意味しました。ソーシャルイノベーション研究では、エコシステムを「連携のとれたネットワーク」と表現します。ネットワークを作るだけではエコシステムになりません。連携のとれた、とは、そのネットワークを拡大させ、持続させるようメンテナンスをおこなっている状態を想像してください。そのためには、ネットワーク内での盛んなコミュニケーションが必要であり、また、地域の文化や状況にあわせてエコシステムをつくる必要があることがわかります。
 社会インパクトもエコシステムも概念を示すキーワードであり、この用語を使うことは国内外の潮流です。しかしながら、新たなキーワードは、それが用いられる背景や理由を理解することで、そこにある問題が何かをつかめるのだと思います。